相談者:コンサルティング会社社長
弊社ではコンサルティング業を主業務にしているのですが、事業拡大のため不動産業も始める方向で動いています。
宅建業免許を取得したとしても主業務は変わらずコンサルティング業となる予定ですが、宅建業をメイン業務にしなくても宅建業免許を取得することはできるのでしょうか?
また、場合によっては宅建業用に別会社を設立することも考えています。その場合の注意点は何でしょうか?
回答:行政書士 石井宗信
宅建業を主業務としなくても、宅建業免許を受けることはできます。会社として別業務を兼業していることは宅建業免許において問題になりません。
例えば、元々自社物件の賃貸業を行っている業者さんが宅建業免許を取得するということはよくある話です。お客様のように宅建業とは別業界から参入されるということも決して珍しいことではありません。
ただし、行政側としても不必要に宅建業免許を下ろすことは本意ではありません。5年にごとの免許更新の度に「全く実績がありませんでした」ということが複数回連続してしまうと、宅建業免許が不要であるとみなされて更新拒否や取消しとなってしまうこともあります。メインの事業でないとしても、少なくとも年に1件以上の実績をあげることを目指しましょう。
宅建業用に別会社を設立する場合は、事務所の所在地と専任宅地建物取引士に特に注意が必要です。代表者が同じである、グループ会社であるといったことは関係なく、完全に別法人であるものとしての配慮が必要となります。
宅建業を主業務としなくても、宅建業免許は受けられます。
宅建業免許を受けたからといって、宅建業一本で営業しなければならないわけではありません。
これまでの別の主業務を継続しつつ、事業拡大として宅建業を開業することは決して珍しいことではないのです。
宅建業の実績はあげるようにしましょう。
行政側としても、全く実績のない業者の宅建業免許をいつまでも維持させてはくれません。
5年ごとの更新の度に宅建業の実績を報告しますが、実績が極端に少ないことが複数回連続してしまえば、さすがに宅建業免許の維持は難しくなります。
主業務ではないにせよ、一定の営業活動は続けて実績をあげることを目指しましょう。
宅建業用の別会社を設立する場合は注意が必要!
会社の事情によっては、主業務を行っている会社とは別に宅建業を専門で行う会社を設立し、宅建業免許の取得を行うこともあるでしょう。
この場合は代表者が同じであることやグループ会社であることは関係なく、完全に別会社で宅建業免許を申請することになりますので、同じ会社内の事業拡大として宅建業免許を取得する場合とは別の配慮が必要となります。
事務所の同居問題
現在の主業務を行う会社と同じ場所に宅建業の会社を設立する場合は注意が必要です。
宅建業免許においては、原則として別法人との同居が認められていません。やむを得ず同居する場合には、フロアを高さ180cm以上のパーティションで区切る等の方法により、それぞれの事務所スペースを独立させる必要があります。
加えて、宅建業免許では会社登記簿上の本店所在地と宅建業を行う事務所の住所が一致している必要があります。登記だけは今の会社と同じ場所にしておいて、実際の事務所は別の場所に設けるといった方法は使えません。あくまでも「登記簿上の本店所在地がどこにあるか」によって判断されることにご注意ください。
専任宅地建物取引士の配置
代表者の方が宅建士資格をお持ちで、専任宅地建物取引士を務めるつもりである場合には注意が必要です。
専任宅地建物取引士は、別会社の業務に一切従事することができません。そのため、現在主業務を行っている会社の代表者を務めつつ、新たに設立する宅建業の会社で専任宅地建物取引士を務めることはできません。
このような場合は、専任宅地建物取引士を務めてくださる方を別で手配するか、主業務を行っている方の代表者を辞任するといった対応が必要になります。
宅建業をメインの事業としなくても、事業拡大のためのサブ業務として宅建業免許を取得し、宅建業を開業することは可能です。
ただし、いくらメインの事業ではないとしても一切の実績をあげられていない状態が長く続けば免許の維持が難しくなります。
また、宅建業専用に別会社を設立する場合には事務所の場所や専任宅地建物取引士の配置といった点で別の配慮が必要となるのでご注意ください。
当事務所にも、事業拡大のために宅建業免許の取得を目指す業者さんからのご相談を多数頂いております。同じ会社内で免許を取得する場合でも別会社を設立する場合でも、是非ご相談ください!
まとめ
- 宅建業を主業務としなくても、宅建業免許は受けられる。
- 主業務でないからといって、極端に実績が少ない状態を長く続けてしまうと、宅建業免許の更新を拒否されたり、取り消されたりすることがある。
- 宅建業用に別の会社を設立して宅建業免許を取得する場合には、事務所の所在地や専任宅地建物取引士の配置等に関する配慮が必要となる。