宅建業は取り扱う商品が不動産という高額商品であるため、何かトラブルがあったときに莫大な額の損害が生じる場合があります。
しかし、全ての業者が満額で損害を賠償できるわけではないでしょう。無い袖は振れませんから、損害賠償をするのにも限界があります。
そのような事態にお客様が泣き寝入りをしないために、宅建業者は保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付するか、営業保証金を供託することにより事前に保険をかけておかなければなりません。宅建業を開始する前に国にお金を預けておいて、もしもの場合は取り急ぎそこから賠償をしようというものです。
これらは両方行う必要はなく、このどちらかを自由に選択して行うことができます。
この手続きは行政庁への宅建業免許申請とは別で行わなくてはならないため、免許申請だけして安心というわけにはいきません。とりわけ保証協会への加入手続きは行政庁への宅建業免許申請と同等の手間を要するので、こちらについてもしっかりと準備をすることが大切です。
保証協会への入会または営業保証金の供託を忘れずに!
宅建業免許申請は、都道府県に免許申請書類を提出するだけでは終わりません。同じくらいの労力を要する作業として、保証協会への入会または営業保証金の供託があります。
こちらが完了していないと、免許の取得が完了していても営業を開始できないので注意しましょう。
弁済業務保証金分担金を納付する場合
用意する金額 | 60万円 (+支店1つにつき30万円) |
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支払先 | 加入する保証協会 |
支払うタイミング | 保証協会加入時 |
営業保証金を供託する場合
用意する金額 | 1,000万円 (+支店1つにつき500万円) |
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預ける場所 | 本店所在地を管轄する法務局 |
預けるタイミング | 宅建業免許を受けた後(供託完了後でないと、営業を開始できない) |
このように、保証協会に加入せず営業保証金を供託する場合と保証協会に加入し弁済業務保証金分担金の納付をする場合とでは用意する金額が大きく異なります。保証協会に加入する場合は別途入会金や年会費等を用意する必要がありますが、それでも100万円台に収まります。
保証協会に加入せず営業保証金を供託するか、保証協会に加入し弁済業務保証金分担金を納付するか、業者それぞれが自由に選択することができますが、金額上の理由から大多数の宅建業者が保証協会への加入を選択しています。
保証協会に加入する場合
ここからは、保証協会に加入する場合の手続きについて説明していきます。
加入手続きのタイミングですが、書類の提出は都道府県の窓口に免許申請書類を提出した後すぐに行うことができます。
保証協会の加入手続きは1ヶ月程度の期間を要します。これは知事免許が下りるまでと大体同じです。ですので、このタイミングでやっておけば都道府県の窓口で申請した免許が下りるのを待つのと同時進行で保証協会の加入手続きを進めることができ、非常にスムーズです。
「ハト」と「ウサギ」とは? どちらに入ればいいの?
保証協会について調べたり他の宅建業者から話を聞いたりしていると、「ハト」や「ウサギ」というワードを耳にすることがあると思います。これらは、保証協会の通称なのです。
正式名称はそれぞれ次の通りです。
- ハト → 全国宅地建物取引業協会連合会
- ウサギ → 全日本不動産協会
それぞれがハトまたはウサギをシンボルマークとしているため、一般的にこのように呼ばれています。
保証協会はこれら2つがあり、どちらに加入するかは自由ですが両方に加入することはできません。
どちらも東京都に本部を構えている組織ですが、加入手続きの窓口となるのは本店所在地の住所を管轄している支部です。
加入手続きの大まかな流れ
保証協会への加入手続きには、1ヶ月~1ヶ月半程度の時間を要する場合があります。そのため、都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出してすぐに加入手続きに移り、免許が下りるまで同時進行で進めていく方がほとんどです。
簡単な流れは次の通りです。
※より詳細な手続きについては、保証協会の仕組みとメリット・デメリットのページをご覧ください。
【4月1日に都道府県庁への免許申請が完了した場合】
協会の支部によっては、入会金を支払うタイミングや事務所での面談時期等が前後したり、別途説明会への参加を求められることもあります。協会から加入手続きの書類を取り寄せると、加入までのスケジュールを同封して送ってくれるので、そちらも併せてご確認ください。
書類の準備はお早めに!
保証協会の加入手続きに必要な書類は、都道府県に提出する免許申請書類と同じかそれ以上のボリュームのものを要求されます。
こちらの準備に手間取って保証協会への加入手続きが遅れてしまうと、せっかく免許を取得してもすぐに営業を開始できません。スムーズに開始するためにも、保証協会への加入手続き書類は都道府県への免許申請書類と同時に準備しておきましょう。
加入手続きに必要な書類は、協会に問い合わせることで指定した住所に送ってもらうことができます。取り寄せたからといって絶対に加入しなければならないということはないので、思い立ったら早めに取り寄せておくとよいでしょう。
弁済業務保証金分担金納付書を失くさない!
弁済業務保証金分担金の納付が完了すると、協会から弁済業務保証金分担金の納付書、すなわち領収書が送られてきます。(支部によっては、窓口に取りに行く場合もあります。)
この弁済業務保証金分担金納付書は都道府県庁にて宅建業の免許証を受け取る際に必要になるので、大切に保管しておきましょう。
営業保証金を供託する場合
保証協会に加入せず営業保証金を供託する場合は、次のような手続きをとることになります。
- 免許通知ハガキが届いた後、本店所在地最寄りの法務局に営業保証金を供託する。
- 供託書の控えを添付した届出書類を都道府県の窓口に持参し、営業保証金の供託を完了した旨の届出をする。
保証協会に加入しないため用意する書類のボリュームは少ないですが、ご自身で法務局に営業保証金を供託し、その旨を都道府県の窓口にて届け出なければなりません。そのため、ご自身で動かなければならない作業が少し増えることになります。
※宅建業免許を受けてから3ヶ月以内に供託を確認できない場合は、国から「早く供託をしてください」という催促が来ます。この催促を受けてから1ヶ月以内に供託をしないと、宅建業免許を取り消されることがあります。営業保証金を供託しないと営業を開始できないので、いずれにせよ早めに供託するようにしましょう。
まとめ
- 宅建業を営むためには、免許を取得するだけではなく、弁済業務保証金分担金の納付または営業保証金の供託をしなければならない。
- 弁済業務保証金分担金の納付は、宅建業の保証協会に加入することにより行うことができる。
- 営業保証金の供託は、自ら本店所在地最寄りの法務局にて行う。
- 弁済業務保証金分担金は営業保証金に比べて金額が極めて低くなるので、大多数の業者が弁済業務保証金分担金の納付を選択している。
- 保証協会の加入手続きに必要な書類は、行政庁への免許申請書類同じくらいのボリュームがある。
- 保証協会への加入手続きは1ヶ月程度かかるため、宅建業免許の審査期間中に同時進行で進められるようにしておく。