東京都内にて不動産会社を経営しています。現在本店のみで営業しているのですが、業務拡大に伴い東京都内に支店を開設したいと考えております。現在弊社に勤務している宅建士は複数いるため、うち一人を支店の責任者とする予定です。ただ、支店として使用したい事務所が現在工事中で、取り急ぎ近くのレンタルオフィスを借りて、仮の支店にしようと考えております。工事が完了次第、改めて移転の手続きをとるつもりです。以上のことも含め、支店設置について気をつけるべきことがあれば教えていただきたいです。
本店と同じ東京都に支店を開設するので、東京都への変更届を提出することになります。
なお、支店には支店専属の専任宅地建物取引士と、「政令使用人」という支店代表者を設置する必要があります。政令使用人と専任宅地建物取引士は兼任できますので、まずは本店にいらっしゃる宅地建物取引士の方1名を支店の政令使用人兼専任宅地建物取引士とする一人だけの支店として開設するのが一般的です。ちなみに、開設する支店に「○○支店」という名称を用いることはお考えでしょうか。支店の設置に際して支店の登記は必須ではないのですが、「○○支店」とする場合のみ支店の登記がなされている必要があります。支店の登記を行わない場合は、「○○店」や「○○オフィス」といった名称を用いることが多いです。そして、工事が完了するまで近くのレンタルオフィスを借りるという方法はあまり推奨しません。一時的にレンタルオフィスに支店を開設した後、工事が完了したら再度移転の手続きをとらなければなりません。加えて、宅建業免許では賃貸借契約の期間が短いと宅建業の事務所であると認めてもらえず、支店開設の変更届が受理されないことがあります。少なくとも1年以上の契約期間で事務所を使用できることが求められるので、その内容で契約したにも関わらず本命のオフィスが見つかったからといってすぐに解約してしまえば、レンタルオフィス側にも迷惑となります。以上の他、支店も本店と同様の事務所要件を求められます。電話番号も本店と共有することはできず支店専用のものが必要となることに気をつけましょう。また、保証協会には事務所単位で加入するため、支店を開設する場合は支店所在地を管轄している支部に新規で入会する必要があります。新規入会であるため入会金が発生し、事務所での面談も行われます。年会費等も増加しますので注意しましょう。
支店を開設する場合、まずは場所に注意!
宅建業免許は、事務所の所在地によって受けるべき免許の種類が変わります。
本店と同じ都道府県内に設置する場合は問題ないですが、別の都道府県に設置する場合は「免許換え」という手続きをとり、国土交通大臣免許への切換えが必要となります。
本ページでは、同じ都道府県内に支店を開設する場合を想定してお話しいたします。
支店開設に際し、必要な人員を確保しましょう。キーワードは「政令使用人」!
本店において専任宅地建物取引士が必要であるのと同様に、支店にも支店専属で勤務できる専任宅地建物取引士が必要です。たとえ本店のすぐ近くに支店を開設したとしても、本店の専任宅地建物取引士が兼務することはできません。
また、事務所ごとにその事務所へ常勤できる責任者が必要となります。代表取締役は原則として本店の責任者を務めるため、支店の責任者を兼務できません。
本店一つで営業している業者様はあまり聞き慣れないかもしれませんが、支店を設置する場合はその支店長として「政令使用人」という役職の人員を配置する必要があります。
政令使用人は役員でなくとも就任できます。また、特に資格等も不要です。ただし、宅建業免許においては役員と同等の扱いを受けますので、手続き時には役員と同じ書類を求められます。
なお、実際のところほとんどの会社ではその支店の専任宅地建物取引士の方が政令使用人を兼任しています。
本店に専任宅地建物取引士の方が複数いらっしゃる場合、その中のどなたかを支店の専任宅地建物取引士として異動させるという方法をとる業者様も多いです。
ただし、この場合は本店の専任宅地建物取引士が一人減ることになりますので、従業員の人数との兼ね合いに注意し、5人に1人の割合で専任宅地建物取引士が置かれている状況を崩さないようにしましょう。
支店も本店と同様、「事務所としての準備が完了してから」申請!
支店開設時には、現在宅建業免許を受けている都道府県に対して変更届を提出します。その際には新規申請や更新のときと同様に、支店内の写真を撮影して提出しなければなりません。
よって、変更届提出前には事務所としての体裁を整えておかなければなりません。
- 支店従業員の人数分の執務机と椅子(政令使用人、専任宅地建物取引士も人数に含みます。)
- 接客用の対面で座れる机と椅子(執務机とは別に用意します。)
- 固定電話機(支店専用の固定電話番号が必要です。)
- 報酬額表
- 業者票
「○○支店」という名称を用いる場合
宅建業免許では、開設する事務所ごとに事務所の名称を付けます。本店は必ず「本店」となるので、支店開設をしたことがなければあまり意識しないかもしれませんが、支店の場合は任意の名称を付けることができます。
ただし、「○○支店」という名称を付ける場合は原則として当該支店住所について支店の登記がなされていることを求められます。支店の登記にもコストがかかりますので、特にこだわりがなければ「○○店」や「○○オフィス」といった名称にするのも手です。
弁済業務保証金分担金等、保証協会関連費用の増額にも注意!
多くの宅建業者が加入する保証協会は、事務所単位で加入します。支店を開設する場合は、支店所在地を管轄する支部に新規入会します。
本店の入会時と比べて費用は半分ほどですが、追加費用が発生することに注意しましょう。
変更届から支店開設まではどう過ごす?
都道府県に支店開設の変更届を提出してから、審査等の手続きが完了するまで1ヶ月程度かかります。
その間、開設予定の支店は審査段階にあるため支店での宅建業営業はできません。審査が下りるまでは本店でのみ営業しましょう。
また、保証協会の支店入会手続き書類は都道府県への変更届提出直後に出すことができます。都道府県の手続きが完了するのを待つ間、保証協会への支店入会手続きを進めることとなります。
メインのイベントとしては、支店にて行う事務所面談があります。本店の新規入会時に行ったものと同様に、支店でも政令使用人と専任宅地建物取引士が出席して事務所面談を行います。
まとめ
- 本店と同じ都道府県内に支店を開設する場合は、免許を受けている都道府県に変更届を提出する。
- 本店と違う都道府県に支店を開設する場合は、国土交通大臣免許への免許換えが必要となる。
- 支店には支店専属の専任宅地建物取引士が必要となり、本店との兼任は認められない。
- 支店には責任者として「政令使用人」という役職の人員を配置する。支店への常勤性を求められるため、多くの場合は専任宅地建物取引士が兼任する。
- 支店開設の変更届提出時にも、支店内写真の添付が必要となる。机や椅子、固定電話機といった事務用品、報酬額表や業者票等の掲示物も揃えて撮影した上で申請する。
- 「○○支店」という名称を用いる場合は、支店の登記がなされていることを求められる場合がある。
- 保証協会も支店として新たに入会するため、会費や弁済業務保証金分担金が増額となる。
- 支店開設の変更届を提出してから1ヶ月程度で審査が完了する。審査完了を待つ間、保証協会の事務所面談等の入会手続きを進める。