宅建業を開業するにあたって、実際に営業を行う場所は大切な要素の一つです。
開業する場所としてはオフィスビルの一角を使用して・・というのが主流で皆さんもイメージしやすいとは思いますが、最近はご自宅で開業をされる方も少なくありません。
東京都は自宅での開業を原則として認めていないというスタンスをとっていますが、裏を返せば例外に該当すれば認めてくれるということです。実務上では認められた例が多々あります。
自宅で開業した場合のメリット、気をつけるべき点をそれぞれ見ていきましょう。
ご自宅で開業する場合のメリットは「大幅なコストカット」!
最大のメリットは、何といっても家賃が無料であることです。事業用の賃貸物件は家賃が高めであるだけでなく、得てして賃貸借契約締結時に多額の権利金(返還されない敷金のようなもの)を支払わなければなりません。
それらを全て支払わずに済むので、開業資金や開業後の経費をかなり抑えることができます。
宅建業を開業するにあたっては初期投資としてトータルで300万円前後が必要となりますが、敷金・保証金・礼金等、事務所の準備に費用をかけずに済めば100万円ほど節約できます。
さらに先のことを考えると、自宅なので自分の好きなようにデザインすることができます。もちろん事務所としての体裁を保つことが大前提ですが、賃貸物件と比べればかなり自由度は高く、まさしく「自分の事務所」という実感がより湧いてくることでしょう。
一時的に宅建業免許が欲しい地主さんにもオススメ!
貸しオフィスを借りるのは面倒だし、自宅は広くて立地が良いからという理由で自宅開業をお考えになる方は多いですが、実はそういった方ばかりではありません。
宅建免許はこれから宅建業をやっていこうとする方はもちろん取得しなければなりませんが、例えば広い土地の地主さんが自分の土地を切り売りするといった場合、たとえ一時的でも免許を受けなければなりません。
ただこの場合、地主さんにしてみれば土地を売り終えてしまえばもはや宅建業を行うことはありません。それなのにわざわざ宅建業用にオフィスを借りるのは何だかもったいないですよね。
このように、自宅兼事務所として使えるほど大きな自宅をお持ちの方はもちろん、自分が持っている土地を切り売りすることだけが免許を受ける目的であるという方にも自宅での開業はオススメできるといえます。
弊所にも、こういった一時的に免許を受けたい地主さんや、マンションのオーナーさん等からの相談が何件か寄せられております。
自宅で不動産業を開業するとき気をつけるべき点とは
ご自宅の間取りについて
東京都の基準を例にとると、一部ではありますが以下のような基準を満たさなければならないとされています。
- 自宅用と事務所用に、別々の入り口が設けられていること
- 事務所と他の部屋(リビングなど)が壁で区切られていて、事務所として独立していること
- 玄関を入ってから他の部屋を通ることなく、事務所用の部屋にたどり着けること
- 部屋が事務所として機能していて、事務所以外には使用しないこと
上記のような基準は設けられているものの、例えばご自宅に玄関が一つしかない(自宅用と事務所用に別々の入り口がない)といった場合でも、間取りによっては事務所として認められるケースもあります。
このように、基準はあれど実務上では認められることもあるというのが現状です。こればかりはケースバイケースなので一概には言えませんが、皆さんのご自宅ももしかしたら事務所として使用できるかもしれません。
事務所として利用する部屋の設備について
ご自宅で開業する場合でも、事務所としての機能を備えていなければならないことに変わりはありません。四畳半の部屋にパソコンを一台だけ置いて事務所と言い張ってもダメなのです。
どのようなものが必要なのか具体例を挙げますと、
- 固定電話番号(※携帯電話番号不可) ご自宅のものとは別の番号が必要になります。
- 固定電話機
- 接客用の机と椅子 お客様対応スペースを設ける必要があります。
- 事務用の机と椅子 お客様用の机椅子とは別に、従業員の人数分必要です。
これらは最低限必要となります。コピー機等のオフィス用品もあった方がいいですが必須ではありません。部屋の真ん中に机と椅子を並べ、部屋の隅っこに机とノートパソコンと電話機を置いた部屋でも認められたケースがあります。
逆に認められなかった例、いわゆるNG集を挙げると、
- 部屋の中にベッドが設置されていた
- ふすま一枚で部屋と部屋が区切られており、ドアを使わずに事務所に入れる
- 宅建業とは関係ないゲームや本が多数あり、外見上事務所として見えない
- 実務スペースのみで、お客様との打ち合わせスペースが確保出来ない狭さの部屋であった
このような事例が過去にありました。やはり「仕事」と「生活」は切り離されていないといけないですね。
マンション等の集合住宅で不動産業を始める際の注意点
賃貸マンションでは、賃貸借契約書内で部屋を住居以外に使用してはならないと定めている場合がほとんどです。
このような場合は、マンションの大家さん、または管理組合などに事務所として使うことの承諾を得ておく必要があります。
※東京都では、大家さんからの承諾が取れているかどうか書面で確認するということはしていませんが、だからといって無断で事務所として使用してしまえば契約違反でマンションを追い出されてしまうこともあります。
事務所がなければ開業はもちろんできないので、ご自分が借りているマンションの部屋は事務所として使ってもいいのかどうか今一度確認し、大家さんや管理組合などとよく相談しておきましょう。
「住民票が一緒なだけ・・・」という方へ
実際の居住地は別にあるものの、郵便物送付先の統一など諸々の事情で住民票や印鑑証明書の住所を会社の住所と同じにされている方もいらっしゃるでしょう。
都道府県庁では、会社の登記簿謄本に記載される本店所在地と代表取締役の住所が同じであると、まず自宅兼事務所として扱われます。しかし、実際に居住している場所が別の住所であることを示すことのできる資料を別途提出することで自宅兼事務所と扱われなくなります。
実際に居住している場所、いわゆる「居所」を示すことができる資料は、下記のようなものがあります。※東京都の場合
- 公共料金の領収書
- 賃貸借契約書(「同居人」欄に名前があるだけでもOK)
手続き上自宅兼事務所として扱われなければ、オフィスビルの一室での申請と扱いは同じになりますので、事務所用のスペースと生活用のスペースを分けるといった間取り上の制約を受けることがなくなります。
住民票等書類上の住所が会社住所と同じであるだけ、という方はこの方法もご検討ください。
自宅で確実に宅建業免許を取得したい方へ
当事務所は、宅建業免許の申請や不動産会社の設立、金融機関からの融資や保証協会入会支援など、不動産業立ち上げの際に必要な各種手続きのサポート業務を提供しています。
自宅で確実に不動産業を始めたいという方は、一度ご相談ください。手続きに詳しい行政書士がサポートいたします。