自宅での宅建業開業に求められる物件の間取りを具体的事例から徹底解説!

自社オフィスを持たずに自宅での宅建業開業、または自社オフィスを廃止して自宅へ事務所を移転する不動産会社さんも増えてきているものの、いわゆる「自宅兼事務所」は行政側からすればイレギュラーなケースとして扱われているというのが現状で、オフィスビルの一室を借りて開業するといった通常のケースよりも求められる条件が多くなります。

当事務所にも、「この間取りで大丈夫でしょうか・・・?」といったご相談が多く寄せられています。

ここからは、当事務所が過去に取り扱った事例から、自宅兼事務所として申請可能な間取りがどのようなものか解説していきます。ご自身の自宅に近いものがあれば、是非ご参照ください。

※注1.紹介する事例は全て東京都のものです。都道府県により扱いが異なる場合があるのでご注意ください。 

※注2.紹介するお客様の氏名等は全て仮名です。間取り図も実際のものとは一部異なります。 

Case 1:自宅マンションの、玄関を入ってすぐのところにある一室を事務所としたい。(宮﨑様 40代男性)

図面内左下の、「洋室」を事務所スペースにして宅建業免許の申請をしたいと考えています。

自宅兼事務所として申請可能な間取りと言えるでしょう。

事務所スペースとそれ以外のお部屋全てに扉がついていて区切られていて、玄関から事務所スペースの「洋室」まで中央の廊下のみを経由して行き着くことができます。

他の生活スペース(LDKや寝室等)についても、事務所スペースを通ることなく全て廊下を経由して行き着くことができます。

あとは事務所スペースとして使用する洋室が、下記のものを設置できるほどの広さである必要があります。
・接客用の対面机と椅子
・従業員の人数分の机と椅子
・固定電話機

なお、「洋室」ではなく「寝室」を事務所スペースとすることも間取り上は可能です。ただし、ベッド等の生活用品があると生活スペースとして扱われてしまいますので、申請の時までに片付けなければなりません。

Case 2:自宅マンションの一室を事務所としたい。ただし、その部屋がダイニングを通った先にある。(桑原様 30代女性)

図面内右下の、「洋室」を事務所スペースにして宅建業免許の申請をしたいと考えています。

この間取りですと、残念ながら自宅兼事務所として宅建業免許の申請はできません。

事務所スペースとして使用したい「洋室」に行き着くために、必ず生活スペースである「ダイニング」の中を通らなければならないからです。これでは事務所スペースと生活スペースが分かれているとは言えず、宅建業免許申請を受け付けてもらえません。

「ダイニング」を事務所スペースにすることはできますか?

それもNGです。「ダイニング」を事務所スペースにすると、先程とは逆に「寝室」や「洋室」という生活スペースに行き着くために事務所スペースを通らなければならないことになってしまいます。これも事務所スペースと生活スペースの区切りができていないので、自宅兼事務所としての申請はできません。

この間取りでは諦めるしかないのでしょうか・・・?

諦めるにはまだ早いです!今回の場合は、「ダイニング」内に高さ180cm以上のパーティション等で壁を設け、事務所スペースと生活スペースの両方に通じる共通の通路を作り出すことで解決の可能性があります。

区切り方の一例

あくまで一例ですが、「ダイニング」にこのような形でパーティションを設置してしまえば、玄関ホールから見て手前側は事務所スペースの「洋室」と生活スペースの「ダイニング」・「寝室」に通じる共通の通路ということになります。
このように、パーティション等で区切ることにより「共通の通路」を作り出してしまうことで申請が可能になることもあります。

ただ、共通の通路には生活用品はもちろん基本的に物を置くことができません。そのため、日常生活において「ダイニング」を使用できる面積が狭まってしまいます。

加えて、パーティションの設置費用は決して安いものではなく、大がかりな作業になることもあります。確実に行うためにも、申請先の都道府県庁に図面を持参してどのようにパーティションを設置すればよいかアドバイスを受けておくと良いでしょう。

当事務所にご依頼いただく場合でも、事前にお客様から図面をお預かりして都道府県庁の窓口にて確認を取るようにしています。

Case 3:自宅アパートを事務所としたい。ワンルームのアパートで、ベッドやTV等の家具も置かれている。(山﨑様 20代男性)

ワンルームなのですが、こちらは自宅兼事務所として申請可能でしょうか?

自宅兼事務所とするのは事実上ほぼ不可能です。

まず、お部屋が一つだけという時点で大前提である事務所スペースと生活スペースの区切りができません。そのため、高さ180cm以上のパーティション等での区切りが必須となります。

区切り方の一例

このように区切ればとりあえず要件は満たせますが、事務所スペース内に最低でも机を2つと椅子を3つ、そして固定電話機を設置すると考えるとあまり現実的ではないと思います。区切ったことで生活スペースが半分近く削られてしまうのもなかなか不便でしょう。

Case 4:自宅一軒家で宅建業を開業したい。事務所として使用できる部屋と、間取り上の問題点があれば教えてほしい。(牧様 50代男性)

自宅の間取り図はこちらです。宅建業の事務所として使用可能でしょうか?

使うお部屋次第ですが、ほとんどのお部屋を自宅兼事務所として申請可能です。1階も2階も全てのお部屋に扉がついていて、どのお部屋にも玄関から廊下のみを経由して行き着くことができるので、生活用品が置いてあるリビングルーム以外のお部屋であれば申請が可能です。

ただし、2階の図面下側の「洋室」はバルコニーに通じているため、こちらは生活スペースと判断されてしまう可能性があります。ですので、2階ではそちらのお部屋は避けた方が良いでしょう。

ありがとうございます。2階の和室を使っていなかったのでそこを事務所スペースにしようと思ったのですが、和室も事務所として使用可能でしょうか?

和室でも問題はありません。接客用の対面机と椅子、従業員の人数分の机と椅子、固定電話機が設置できれば大丈夫です。
ただ、お客様が事務所に訪問する場合は事務所スペースでの接客となるので、お客様が2階まで上がるのはちょっと・・・という場合は避けた方がいいかもしれません。

かしこまりました。それならば、1階の玄関横洋室が良さそうですね。

そうかもしれませんね。玄関横の洋室も間取り上自宅兼事務所として使用可能なので、そちらでも問題なく申請できます。
なお、1階のお部屋を事務所として使用する場合でも、2階部分の写真も提出が必要です。お部屋の中まで写す必要はないですが、撮影を忘れないようにしましょう。

Case 5:自宅一軒家で宅建業を開業したい。1階のいずれかの部屋を事務所扱いとし、2階は完全に生活スペースとして区別する。(佐野様 40代女性)

1階玄関を入って直進した先にある「洋室」(図面右上)か、その隣の「洋室」のどちらかを宅建業事務所にしたいと考えております。

この間取り、実は思わぬ落とし穴が潜んでいます。この間取りのままでは、自宅兼事務所として申請することができません。

1階だけ見れば、全てのお部屋に扉がついていて、玄関から廊下だけを経由してお部屋まで行き着くことができるという前提条件をクリアしているので問題ないように見えます。極端な話、建物が1階だけであればどちらのお部屋でも自宅兼事務所として申請可能です。

問題なのは2階の間取りです。階段を上がってすぐ、何の区切りもなくリビングに直結していますね。そうなると、生活スペースと事務所スペースを分けているものと扱われなくなってしまいます。

2階にお客様を通すことはないのですが、それでも区切られていなければならないのでしょうか?

その通りです。いくら2階にお客様を通す予定がなかったとしても、申請時には2階の写真も提出しますので、生活スペースと事務所スペースとがしっかりと区切られている必要があります。今回の場合は階段と2階のリビングが直結しているため、2階のリビングの区切りを明確にすることができません。
壁等により区切られていない以上、行政からは階段と1階の廊下も全てリビングの一部であるものと判断されてしまいます。
そうなると、1階の廊下は「共通の通路」ではなく生活スペースという扱いになるので、事務所スペースに行き着くために生活スペースを通っていることになってしまいます。

階段がリビングに直結しているだけで、下の廊下までリビングの一部として扱われてしまうんですね・・・。何か手立てはあるのでしょうか?

1階か2階のどちらかでいいので、階段に扉を設置する方法が挙げられます。そうすることでリビングと1階の廊下が区切られるので、1階の廊下を共通の通路として扱えることになります。

もう一つは、リビングに壁を設置する方法です。180cm以上のパーティション等を用いて区切ることにより、2階にも共通の通路を作り出します。

区切り方の一例

あくまで一例ですが、このように区切ることでリビングと分断されて共通の通路として扱われる可能性があります。ここが共通の通路として扱われることで、階段で繋がっている1階の廊下も共通の通路として扱われます。そうなれば、玄関から共通の通路のみを通って事務所スペースと生活スペースのどちらにも行き着くことができる構図ができあがることになります。

ただ、パーティションや扉の設置費用は決して安いものではなく、大がかりな作業になることもあります。確実に行うためにも、申請先の都道府県庁に図面を持参してどのようにパーティションを設置すればよいかアドバイスを受けておくと良いでしょう。

当事務所にご依頼いただく場合でも、事前にお客様から図面をお預かりして都道府県庁の窓口にて確認を取るようにしています。

Case 5:自宅一軒家で宅建業を開業したい。1階の部屋を使用予定だが、2階の廊下に洗面台が・・・。(神里様 30代男性)

玄関を入ってすぐのところにある、1階の洋室に事務所を設けたいと考えております。

全てのお部屋に扉がついていて、どのお部屋にも玄関から廊下のみを経由して行き着くことができるので、間取り上問題ないように見えますが、実はこのままでは自宅兼事務所として申請ができません。

2階の図面内右側にある洗面台がポイントです。

この洗面台ですが、廊下にそのまま設置されています。こうなると、洗面台が置かれている2階の廊下は共通の通路ではなく生活スペースとして扱われてしまいます。

2階にお客様を通す予定はないので、関係ないのではないでしょうか。

2階にお客様を通す予定がなかったとしても、申請時には2階・3階の写真も提出しますので、生活スペースと事務所スペースとがしっかりと区切られている必要があります。

2階の廊下が生活スペースとして扱われてしまうと、階段で繋がっている1階の廊下も含めて生活スペースとして扱われてしまいます。そうなると、玄関から廊下(生活スペース扱い)を通って事務所スペースに行き着くことになるので、自宅兼事務所として申請できなくなってしまいます。

洗面台は備付けのものなので、動かすことはできないです。何か解決策はありますか?

高さ180cm以上のパーティション等で生活スペースを区切る壁を設けることで、共通の通路を作り出す方法が良いでしょう。
洗面台を動かしたり、すぐ前に壁を立てるといった方法は現実的ではないと思いますので、1階または2階の階段前にドア付のパーティションを設置して、現状では生活スペース扱いになっている2階の廊下を分断します。

区切り方の一例

このように区切ることで、2階の廊下・階段と1階の廊下が分断され、1階の廊下は共通の通路扱いになります。そうなれば、玄関から共通の通路のみを通って事務所スペースにも生活スペースにも行き着くことができるようになり、自宅兼事務所としての要件を満たします。

ただ、こちらの区切り方はあくまで一例ですので、確実に行うためにも申請先の都道府県庁に図面を持参してどのようにパーティションを設置すればよいかアドバイスを受けておくと良いでしょう。

当事務所にご依頼いただく場合でも、事前にお客様から図面をお預かりして都道府県庁の窓口にて確認を取るようにしています。

いかがだったでしょうか。自宅兼事務所での宅建業をご検討の方は、この中から条件の近い間取りをご参考にしてくだされば幸いです。

なお、当事務所では自宅兼事務所での宅建業開業をご希望のお客様へのサポートを充実させております。間取りのご相談だけでも結構ですので、ご希望のお客様はぜひ当事務所をご活用ください!

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