不動産会社の定款とは~作成から認証まで~ 


定款は、いわゆる「会社の憲法」と呼ばれるものです。会社の運営方法や組織構成、就業規則など、すべてがこの定款に基づいて定められることになります。

これは、日本国内どこに会社を作ろうが株式会社だろうが合同会社だろうが全ての会社が定めなければなりません。

会社の憲法とも言うべき定款ですから、いい加減なものを作成するわけにはいきません。一定のルールを守って作成しないと、定款として認められなくなってしまいます。

問題のない定款を作るにはどうすればいいのか、作成した後はどうするのか、このページで解説していきます。

そもそも定款とは何か?どのように作成していけばよい?

いわゆる「会社の憲法」として扱われる定款。書式等は決まっているのでしょうか。

定款は、「第○○条 ~~」といった条文形式で作成します。定めていくべき内容は後ほど解説していきますが、簡単に言えば「会社の決まりごと」とお考えいただければイメージしやすいです。

定款のひな形はインターネット検索でも入手することができます。それに従って作成し、細かいルールやわからない部分は法務局の電話相談窓口や最寄りの公証役場に質問すると良いでしょう。

それでは、いよいよここからは定款の中身について見ていきましょう。

書かないと定款そのものが無効!絶対的記載事項とは?

次に挙げる事項は、定款において定めをしておかないと定款自体が無効になってしまうとても重要な事項です。

  • 事業目的
  • 商号
  • 本店所在地 ※1
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 ※2
  • 発起人の氏名及び住所 ※3
  • 発行可能株式総数 ※4

※1 定款上では市区町村(東京23区内であれば区)までの記載があれば十分ですが、設立登記の段階までにはより詳細に定めておく必要があります。

※2 株数ではなく、出資金額を記載します。この価額が基本的には「資本金」として扱われることになります。

※3 印鑑証明書と一字一句同じように記載しなければなりません。「○丁目〇番地〇〇号」というように記載しましょう。印鑑証明書に記載が無い限り、ハイフンつなぎはNGです。

※4 これだけは定款の認証後に定めることが可能ですが、発起設立の場合は発起人全員の同意、募集設立の場合は創立総会の決議により定款を変更しなければなりません。面倒ですよね。ですので、発行可能株式総数についても定款認証時までに定めておくことをお勧めします。

事業目的に入れておかないといけない文言とは?

事業目的とは、設立しようとしている会社が「どのような事業を行って利益を生み出すのか」を明文化することです。

ここで大事なのは、事業目的において「わが社では不動産業を行います!」ということを明文化しておかないと宅建業の免許を受けられないということです。

事業目的に入れておかなければならない文言としては、下記が挙げられます。

  • 不動産の売買
  • 不動産の賃貸
  • 不動産の管理
  • 不動産の交換
  • これらの仲介

一つ一つ分けて書いてもいいですが、「不動産の売買、賃貸、管理、交換およびこれらの仲介」といったように一文にまとめてしまうのが一般的です。

なお、不動産会社といっても不動産業しかやってはいけないわけではありません。事業目的に他の事業を定めることはもちろん、実際に他の事業を兼業しても何ら問題ありません。

本店所在地を決めましょう! 部屋番号までは不要?

定款作成までに、会社の本店所在地つまり本社をどこにおくのかを決めておく必要があります。自宅にするのか、新たに事務所を借りるのかなど、それぞれ選択肢があることでしょう。

ここで一つ知っておいていただきたいのは、定める住所は最小行政区までで良いという点です。つまり、「~号△△番地○○ビル101号室」まで住所として定めなくても良いということです。※定款内の記載は市区町村(例えば東京23区ならば○○区)までで十分です。

本店所在地を変更すると、株主総会を開催しなくてはなりません。また、登記変更まで必要となると、3万円の登録免許税もかかります。ご自分でなさるならそれで済みますが、司法書士等の専門家に依頼する場合には別途報酬がかかってしまいます

「~号△△番地○○ビル101号室」まで定款や登記に本店所在地(所在場所)として定めていた場合、例えば同じビルの201号室に本店を移した場合でも「~号△△番地○○ビル201号室」と定款変更するための株主総会、および本店所在地変更登記をしなければなりません。

しかし、「~号△△番地」までで住所として定めておけば、その番地内で本店所在地を移しても定款変更も変更登記も必要ありません。
ビルの一室を借りて本店としようとお考えの方は、ご参考にしてください。

書いておかないと無効になる事項! 相対的記載事項とは?

次に挙げる事項は、定款に記載がなくても定款そのものが無効になることはないですが、書いておかないと効力が認められなくなるものです。書いておかないと効力が発揮されない、というのは至極当たり前に聞こえるかもしれませんが、効力が発揮されないということは商法・会社法や一般的な慣習に合わせなければならないということです。

※数が多いので、一部のみ挙げます。

株式の譲渡制限に関する定め ここで制限を設けておかないと、自動的に「公開会社」として扱われ、誰もが会社の株式を自由に取得できる状態になってしまいます。
役員の任期 例えば取締役の任期は原則2年ですが、定款で定めることにより伸長(10年が限度)または短縮できます。
公告の方法 定めがない場合は、官報に掲載することにより行うことになります。最近は自社のホームページ上で公告を行う電子公告を選択する会社も増えてはいますが、電子公告をする場合は定款で定めておかなければなりません。

作成するにあたっての注意点

絶対的記載事項さえ記載されていれば、定款としては最低限有効に成立します。相対的記載事項にも該当しない事項は「任意的記載事項」といい、公序良俗に反しなければどんな事項も定めることができます。

しかし、絶対的記載事項だけ書けばよいかというとそうではなく、かといって任意的記載事項をふんだんに盛り込んでガチガチな定款になるのも良くないです。
定款は一度定めてしまうと変更するのが大変なので、過不足のないように定めることが何より大切です。

作成できたら公証役場で定款の認証をしてもらいましょう

株式会社の場合は、定款の作成が完了したらその定款に不備がないかどうか「公証役場」という役所で認証を受けなければなりません。
公証役場にいる公証人というエラい先生方が定款をチェックし、少しでも不備があるとやり直しになります。定款の認証は、設立手続きの一つの山場といえるでしょう。

はじめから完璧な定款を作ることは難しいと思いますので、原案ができたら一度公証役場にメールで定款を送り、チェックを受けることをおススメします。このチェックは認証とは別ですので、手数料等は発生せず公証人の先生からどこに不備があるのかフィードバックを受けることができます。

ちょっとした誤字脱字程度であれば認証を受けるときに公証役場で手直しすることもできますが、やはり完璧な内容の定款で認証を受けたいですよね。困ったときは公証人の先生や行政書士等の専門家とも相談するとより確実です。

定款認証に必要な書類

  • 発起人全員分の印鑑証明書
  • 収入印紙4万円分(※電子定款認証の場合は不要)
  • 公証役場に支払う、定款認証の手数料5万円
  • 認証を受ける定款3部

※電子定款認証とは?

定款認証には、公証役場に紙に印刷した定款を持参して認証を受ける「紙定款認証」と、オンライン上で認証申請を行い認証後の定款を公証役場で受け取る「電子定款認証」の2つの方法があります。行政書士等の専門家が定款認証を代行する場合は、大多数が電子定款認証による方法をとっています。

どちらの場合でも、実はただ印刷された定款では認証を受けるには不十分な状態なのです。

紙定款の場合は収入印紙を貼り付けることで、電子定款の場合は印紙を貼れませんから、パソコン上で「電子署名」をすることで、定款を認証を受けられる状態にしてあげることができます。

電子署名は、いわゆるパソコン上の実印のようなものです。これを利用するためには、「電子証明書」というパソコン上の印鑑証明書を取得する必要があります。取得費用は1~2万円で、取得から2~3年の有効期限があります。他にもパソコン上でソフトをインストールするなど、電子署名を利用できる環境を整えておく必要があります。

収入印紙代4万円と、電子証明書取得費用やパソコンの設定等を天秤にかけ、コスト的に抑えられる方を選択すると良いと思います。

どこの公証役場で認証を受ければよい?

公証役場は全国各地にありますが、どこでも良いというわけではありません。公証役場にはそれぞれ管轄があり、設立しようとする会社の本店所在地によって異なります。

例えば、東京都内に本店を構えようとしている会社の定款の認証を神奈川県にある公証役場で受けることはできません。本店所在地の最寄りの公証役場で認証を受けるのが、より確実で手間もないといえるでしょう。

合同会社を設立する場合

合同会社の場合は、定款の認証が必要ありません。しかし定款を作成しなければならないことに変わりはないので、認証の必要はなくとも行政書士等専門家のチェックを受けたり、法務局の無料相談窓口を利用するなどされるとより確実です。

まとめ

  • 事業目的の中に不動産業を行う旨を定めていないと、宅建業免許を受けることができない。
  • 定款はいわゆる「会社の憲法」。どんな会社も定めなければならず、これに沿って会社の運営方針や規則が決められることになる。
  • 記載をしないと定款自体が無効になる「絶対的記載事項」がある。
  • 記載をしなくても定款は有効だが、記載をしないと効力を持たせられない「相対的記載事項」がある。
  • 作成できたら、公証役場でのチェックを受ける。
  • 公証役場のチェックを受けOKをもらったら、公証人の認証を受ける。※株式会社のみ
  • 公証役場には会社の住所ごとに管轄があるので、事前に確認しておく。

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