【徹底解説】不動産会社の設立に必要な手続き


「自分で会社を立ち上げて宅建業を開業したい!」開業をお考えの方の中には、このような志をお持ちの方も大勢いらっしゃるかと思います。

この場合、まずは不動産会社を設立してから法人の名義で宅建業の免許を取得するという流れになります。

ですが実は、会社の設立と宅建業の免許取得とは無関係な手続きではありません。お互いに切っても切れない関係にあるのです。

法人名義で宅建業の免許を受けるためには、簡単に言えば会社として「我々は宅建業をやるつもりの会社です!」という意思表示を発していなければなりません。

これは会社の「事業目的」を定めることにより行います。事業目的は設立をした後でも変更することは可能ですが、株主総会で承認をもらったり、法務局に登録免許税を納めたり・・、と面倒な手続きをとらないといけません。

後になって面倒な手続きをとることを避けるためにも、設立の時点でしっかりと宅建免許を受けられる体制を整えておくことが大切です。

このページでは、会社の設立手続きに沿って、宅建業を受けられる会社を作るためにはどのようなことを定めておけばいいのかを解説していきます。

おさえておきたい5つのポイント

事業目的 事業目的に必ず入れておかないといけない文言がある?
資本金 どれくらい用意すればよい?
組織 株式会社と合同会社のどちらがよい?
役員 宅建士は役員に入れないといけないの?
設立費用 トータルでいくらかかるの?

会社設立手続の流れをおおまかにおさえておきましょう

設立の流れを大きく分けると次のようなステップになります。不動産会社設立にあたっては、最初の「各種設立事項の設定」において気を付けるべきことがたくさんあります。

各種設立事項の設定

会社を設立するにあたって、まず決めておかなければならない事項は下記の通りです。

  • 商号(会社の名前)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金
  • 役員構成
  • 株式会社か合同会社か
  • 事業年度
  • 会社の印鑑
  • 印鑑証明書(発起人個人のもの)

商号を決めましょう!「不動産」というワードは必須?

会社の商号を定めるにあたっては、何でも好きな名前を付けられるわけではありません。一定の制約が設けられています。

「株式会社」や「合同会社」という文字は必ず入れる。

株式会社○○、または○○株式会社といったように、前につけても後につけても(前㈱でも後㈱でも)どちらでも大丈夫ですが、必ず入れましょう。

似ている商号は付けられない

簡単に言えば、今から設立をしようとしている場所に同じ名前や似ている名前の商号を使用している会社がすでにある場合は、その商号は使うことができません。

また、トヨタ不動産やソニー不動産のように誰が見ても真似だとわかるような商号は不正目的でないにしても使用を避けるべきでしょう。

※類似商号の調査は、設立場所の住所を管轄している法務局にて行うことができます。全く同じでなくても類似であるとみなされたケース(「大丸」と「太丸」など)がいくつかあるので、商号の候補を決めたら必ず法務局で確認しましょう。

公序良俗に反する言葉や、ギリシャ語やハングルのような特殊文字は使えない

こちらも法務局で確認しましょう。

「不動産」というワードは入れなくてもよい!

不動産会社を設立する場合は、商号に「不動産」というワードを入れる必要はありません。商号のバリエーションが広がりますね。

事業目的の設定に注意! 入れておかないといけない文言とは?

事業目的とは、設立しようとしている会社が「どのような事業を行って利益を生み出すのか」を明文化することです。

ここで大事なのは、事業目的において「わが社では不動産業を行います!」ということを明文化しておかないと宅建業の免許を受けられないということです。

事業目的に入れておかなければならない文言としては、下記が挙げられます。

  • 不動産の売買
  • 不動産の賃貸
  • 不動産の管理
  • 不動産の交換
  • これらの仲介

一つ一つ分けて書いてもいいですが、「不動産の売買、賃貸、管理、交換およびこれらの仲介」といったように一文にまとめてしまうのが一般的です。

なお、不動産会社といっても不動産業しかやってはいけないわけではありません。事業目的に他の事業を定めることはもちろん、実際に他の事業を兼業しても何ら問題ありません。

本店所在地を決めましょう! 部屋番号までは不要?

定款作成までに、会社の本店所在地つまり本社をどこにおくのかを決めておく必要があります。自宅にするのか、新たに事務所を借りるのかなど、それぞれ選択肢があることでしょう。

本店所在地が重要になるタイミングは2つあり、1つ目は定款作成時、2つ目は設立登記の時です。

定款には会社の本店をどこに置くのかを記載する必要があるのですが、その記載は市区町村名までで良いとされています。例えば渋谷に本店を置く場合は、定款では「当会社は、本店を 東京都渋谷区 に置く。」といった記載をします。もちろんより詳しい住所を記載しても問題はありません。

設立登記の際には詳しい住所を記載しますが、記載する住所は最小行政区までで良いとされています。つまり、「~丁目△△番地○○ビル101号室」まで住所として記載しなくても良いということです。

定款は市区町村名までで十分登記は最小行政区までで十分、と覚えておきましょう。

本店所在地は定款でも登記簿上でも触れられている事項なので、本店所在地を移したいとなればそれらの記載を改めなければなりません。変更するとなれば株主総会の開催や取締役の合意が必要となり、その議事録を作成することになります。また、少なくとも3万円の登録免許税もかかります。ご自分でなさるなら出費もそれで済みますが、司法書士等の専門家に依頼する場合には別途報酬がかかってしまいます。

ところが、定款で「当会社は、本店を 東京都渋谷区 に置く。」と記載しておけば、渋谷区内で本店所在地を移転したとしても定款を変更する必要がありません。本店を東京都渋谷区に置いていることに変わりはないですからね。

登記においても、例えば「~丁目△△番地」までで住所として定めておけば、その番地内で本店所在地を移しても変更登記は必要ありません。

「~丁目△△番地○○ビル101号室」まで定款や登記に本店所在地として定めていた場合、例えば同じビルの201号室に本店を移した場合でも「~丁目△△番地○○ビル201号室」と変更するための本店所在地変更登記をしなければなりません。

ビルの一室を借りて本店としようとお考えの方は、ご参考にしてください。

資本金はいくら必要なのか? おすすめの金額とは?

資本金とは、株式会社を運営していく上での元手となる資金です。

この金額が多ければ多いほど、それだけ会社の財力に余裕があるということをアピールできます。

宅建業の免許を受けるにあたっては、資本金の額に特に制限は設けられていません。

多いに越したことはないですが、少なくても宅建業免許を受けることは可能です。ただ、あまりに少ないと財力的余裕がない会社に見えてしまい、設立後の営業活動に支障が出る場合があります。

弊所に相談される方では、資本金を100万円とされる方が多いです。

役員はどう決めるべき? 宅建士の役職は?

宅建免許を受けるにあたって、どの役員が何人いなければならないといった制限は特に設けられていません。代表取締役が一人だけの会社で免許を受けている会社も沢山あります。

また、宅建免許を受けるにあたり用意しなければならない宅地建物取引士ですが、こちらは役員である必要はありません。一般従業員として会社にいれば十分です。

もちろん、宅地建物取引士が役員であっても何ら問題はありません。代表取締役が宅地建物取引士であれば、最少一人でも不動産会社を設立できてしまいます。

ただし、役員の中でも「監査役」は専任の宅地建物取引士を務めることができないので気をつけましょう。

株式会社か合同会社か? おススメはどちら?

株式会社として設立するか、合同会社として設立するか、会社設立においては重要な事項です。

宅建業免許に限った話で言えば、株式会社でも合同会社でも宅建業の免許は受けられます。

どちらを選択するかは自由に決めていただいて構わないですが、ここではそれぞれのメリット・デメリットをお知らせいたします。

株式会社を設立する場合

メリット

  • 社会的認知度が高く、営業活動における信頼を得やすい!
  • 株式による資金調達が可能であるため、合同会社よりも資金調達がしやすい!

デメリット

  • 設立時のコストが高い
  • 事業年度ごとの決算報告義務がある
  • 役員に任期があり、その度に改選した上で変更の登記をしなければならない

合同会社を設立する場合

メリット

  • 設立時のコストが安い!(定款認証が不要になるなど)
  • 役員の任期が無いため、改選・登記の必要がない
  • 事業年度ごとの決算報告が不要である

デメリット

  • 社会的認知度が低いため、営業活動がしづらい
  • 株式公開ができないため、上場できない

「合同会社」という形態はまだまだ社会的認知度が低く、どうしても閉鎖的な零細企業のような印象を与えてしまいます。実はGoogleやワーナーブラザーズは合同会社なのですが、これは例外中の例外でしょう。

すでに営業上の地盤がある程度出来上がっていて、あとは会社さえあればすぐに仕事が入ってくるという方であれば合同会社でもいいかもしれませんが、合同会社を設立する確固たる理由がない状態でどちらにするかを悩んでいるのであれば、株式会社をおススメします!特に、「設立費用が安いから」という理由だけで合同会社を選択することは得策ではないです。

事業年度はいつにすべき?

事業年度は、いわば会社が一定期間でどのような活動をしてきたのかをまとめるための区切りとなる期間です。この期間は1年以内であれば好きな期間を定めることができますが、1年間としている会社がほとんどです。

事業年度の決め方は営業の戦略による部分もあるので、税理士とも相談の上で決められると良いかと思います。

気を付ける点を挙げるとすれば以下の通りです。

本業の繁忙期を避ける

事業年度末には、膨大な決算作業が待っています。本業の繁忙期と決算作業のダブルパンチを喰らわないように繁忙期を避ける会社も少なくありません。

納税等、資金繰りに注意する

決算が完了すると、法人税等の税金の支払いといった支出が多くなります。突然の支出にも対応できるよう、あえてお金の入りが良い繁忙期と重ねる会社もあります。

他にも、税理士の繁忙期を避け税理士からのアドバイスを受けやすい時期にするなど、決定する上で様々な要素を考慮しておく必要があります。

会社の印鑑を準備しましょう!必要となるのは4種類!

会社の印鑑は開業後に使用することはもちろん、設立登記の書類等、設立手続きにおいても早速必要となります。セットで販売しているはんこ屋さんが沢山あるので、早めに注文しておきましょう。

用意すべき印鑑

会社実印 法務局での登記申請に使用します。これだけは最低限作っておきましょう。
会社銀行印 設立が完了した後、会社の銀行口座を開設するときに使用します。
角判 会社にとっての認印のような存在です。
会社名・住所のゴム印横判 詳しい住所や電話番号がすでに決まっていれば、こちらもセットで注文すると良いでしょう。

発起人と役員の印鑑証明書を用意

発起人(会社の株主となる人)の印鑑証明書は、公証役場での定款認証(株式会社のみ)に必要となります。取得から一定期間が経過すると使用できない場合があるので、設立手続きを進める目処が立ってから取得しましょう。

役員の印鑑証明書は、設立登記の際に必要となります。こちらも取得から一定期間が経過すると使用できない場合があるので、設立手続きを進める目処が立ってから取得しましょう。

追加で求められた場合や無くしてしまった場合に何度も取りに行くのが面倒という方は、まとめて2~3枚取得してしまうと確実です。

定款の作成・公証役場での認証

定款は、いわゆる「会社の憲法」と呼ばれるものです。会社の運営方法や組織構成、就業規則など、すべてがこの定款に基づいて定められることになります。

会社の憲法とも言うべき定款ですから、いい加減なものを作成するわけにはいきません。一定のルールを守って作成しないと、定款として認められなくなってしまいます。

書かないと定款そのものが無効! 絶対的記載事項とは?

次に挙げる事項は、定款において定めをしておかないと定款自体が無効になってしまうとても重要な事項です。

  • 事業目的
  • 商号
  • 本店所在地 ※定款上では市区町村(東京23区内であれば区)までの記載があれば十分ですが、設立登記の段階までにはより詳細に定めておく必要があります。
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 ※株数ではなく、出資金額を記載します。この価額が基本的には「資本金」として扱われることになります。
  • 発起人の氏名及び住所 ※印鑑証明書と一字一句同じように記載しなければなりません。「○丁目〇番地〇〇号」というように記載しましょう。ハイフンつなぎはNGです。
  • 発行可能株式総数 ※これだけは定款の認証後に定めることが可能ですが、発起設立の場合は発起人全員の同意、募集設立の場合は創立総会の決議により定款を変更しなければなりません。面倒ですよね。ですので、発行可能株式総数についても定款認証時までに定めておくことをお勧めします。

書いておかないと効力が認められない 相対的記載事項とは?

次に挙げる事項は、定款に記載がなくても定款そのものが無効になることはないですが、書いておかないと効力が認められなくなるものです。

書いておかないと効力が発揮されない、というのは至極当たり前に聞こえるかもしれませんが、効力が発揮されないということは商法・会社法や一般的な慣習に合わせなければならないということです。

※数が多いので、一部のみ挙げます。

  • 株式の譲渡制限に関する定め ※ここで制限を設けておかないと、自動的に「公開会社」として扱われ、誰もが会社の株式を自由に取得できる状態になってしまいます。
  • 役員の任期 ※例えば取締役の任期は原則2年ですが、定款で定めることにより伸長(10年が限度)または短縮できます。
  • 公告の方法 ※定めがない場合は、官報に掲載することにより行うことになります。最近は自社のホームページ上で公告を行う電子公告を選択する会社も増えてはいますが、電子公告をする場合は定款で定めておかなければなりません。

作成するにあたって

絶対的記載事項さえ記載されていれば、定款としては最低限有効に成立します。相対的記載事項にも該当しない事項は「任意的記載事項」といい、公序良俗に反しなければどんな事項も定めることができます。

しかし、絶対的記載事項だけ書けばよいかというとそうではなく、かといって任意的記載事項をふんだんに盛り込んでガチガチな定款になるのも良くないです。

定款は一度定めてしまうと変更するのが大変なので、過不足のないように定めることが何より大切です。

作成できたら、公証役場で定款の認証をしてもらいましょう。

株式会社の場合は、定款の作成が完了したらその定款に不備がないかどうか「公証役場」という役所で認証を受けなければなりません。

公証役場にいる公証人というエラい先生方が定款をチェックし、少しでも不備があるとやり直しになります。定款の認証は、設立手続きの一つの山場といえるでしょう。

はじめから完璧な定款を作ることは難しいと思いますので、原案ができたら一度公証役場にメールで定款を送り、チェックを受けることをおススメします。このチェックは認証とは別ですので、手数料等は発生せず公証人の先生からどこに不備があるのかフィードバックを受けることができます。

ちょっとした誤字脱字程度であれば認証を受けるときに公証役場で手直しすることもできますが、やはり完璧な内容の定款で認証を受けたいですよね。困ったときは公証人の先生や行政書士等の専門家とも相談するとより確実です。

定款認証に必要な書類

  • 発起人全員分の印鑑証明書
  • 収入印紙4万円分(※電子定款認証の場合は不要)
  • 公証役場に支払う、定款認証の手数料5万円
  • 認証を受ける定款3部

※電子定款認証とは?

定款認証には、公証役場に紙に印刷した定款を持参して認証を受ける「紙定款認証」と、オンライン上で認証申請を行い認証後の定款を公証役場で受け取る「電子定款認証」の2つの方法があります。行政書士等の専門家が定款認証を代行する場合は、大多数が電子定款認証による方法をとっています。

どちらの場合でも、実はただ印刷された定款では認証を受けるには不十分な状態なのです。

紙定款の場合は収入印紙を貼り付けることで、電子定款の場合は印紙を貼れませんから、パソコン上で「電子署名」をすることで、定款を認証を受けられる状態にしてあげることができます。

電子署名は、いわゆるパソコン上の実印のようなものです。これを利用するためには、「電子証明書」というパソコン上の印鑑証明書を取得する必要があります。取得費用は1~2万円で、取得から2~3年の有効期限があります。他にもパソコン上でソフトをインストールするなど、電子署名を利用できる環境を整えておく必要があります。

収入印紙代4万円と、電子証明書取得費用やパソコンの設定等を天秤にかけ、コスト的に抑えられる方を選択すると良いと思います。

どこの公証役場で認証を受ければよい?

公証役場は全国各地にありますが、どこでも良いというわけではありません。公証役場にはそれぞれ管轄があり、設立しようとする会社の本店所在地によって異なります。例えば、東京都内に本店を構えようとしている会社の定款の認証を神奈川県にある公証役場で受けることはできません。本店所在地の最寄りの公証役場で認証を受けるのが、より確実で手間もないといえるでしょう。

資本金の払込み

定款の認証が終わったら、次はこの作業を行う必要があります。資本金の払込みとは何か、誰がどこにいくら払うのか、説明していきます。

資本金の払込みとは一体何なのか?

「資本金」・・・。このワードは定款の作成・認証を終えられた皆様であれば聞きなじみのあるものだと思います。会社を運営していく元手となるお金であり、いうなれば「うちの会社にはこれだけのお金があるんだぞ」という金額を対外的に表示するものでもあります。

ですが、いくら定款上で「うちには1億円の資本金がある!」と書いていても、実際に用意できなければ意味がないのです。

資本金の払込みとは、定款に記載した資本金をピッタリ用意できることを証明するという作業です。

誰がどこに払えばいいのか? キーワードは、「自分の口座に自分で振込み」

資本金の払込みは、少し変な感覚でしょうが、発起人が「自分の口座に自分で振込みをする」ことにより行います。法務局に通帳の写しを提出し、通帳に記載された振込名義を見て、発起人がきちんとお金を用意できる人物であることが確認されます。

法務局に提出する通帳の写し

  • 通帳の表紙
  • 通帳1ページ目の、名義や口座番号が載っている見開きページ
  • 資本金の振込みがあったことがわかるページ

注意点!

資本金の入金は、設立手続きの中でも間違いが生じやすい手続です。動く金額も大きいので、特に注意が必要です。間違いや問い合わせが多い事例をいくつかご紹介します。

「残高」があるだけではダメ!

口座の残高が10億円あろうとも、「残高がある」という事実だけではそのお金の元手がどこなのかが証明できません。必ず資本金額を過不足なくピッタリ振り込むことが必要です。

「預入れ」ではダメ!

ATMに現ナマで札束を持参し自分の口座に入金をしても、通帳に表示されるのはATMの番号だけです。これではだれが用意したお金かわかりませんね。発起人が1人であればなんとかなることもありますが、資本金は原則「振込み」にしましょう!

出金元、振込先はどちらも発起人の「個人名義の口座」で!

すでに別の会社を経営されている方がやりがちなのが、会社名義の口座を使用してしまうことです。いくら自分が代表者を務めていたとしても、個人と法人は完全に別人です。つまり、会社名義の口座を使用してしまうことは、発起人とは何ら関係のない赤の他人の口座を使用していることと同じです。

振り込むのは、「定款の認証」が終わってから!

定款認証を受ける前に(より正確には定款作成前に、ですが)資本金を振り込んでも、言ってしまえば「認められていない金額」を振り込んでいることになります。振込みは、公証役場で定款を受け取ってから行いましょう。

発起人が複数いる場合

発起人が複数いるのであれば、それぞれの出資金額が決まっているはずです。この場合は、それぞれが定款にて定められた金額を払い込むことになります。

この場合の払込みですが、次の2パターンがあります。

①全員が代表発起人の口座にそれぞれの出資金額を入金する

②発起人がそれぞれ自分の口座に自分の出資金額を入金する

どちらでも法務局では受け付けてくれますが、②の場合は用意する通帳の写しが多くなってしまうので、より簡潔になる①の方法がおススメです。

登記申請書類の作成・法務局にて設立登記の申請

法務局に設立登記書類を提出し手続きが完了すると、晴れて会社設立完了となります。設立登記を行う期限が会社法で定められているため、定款の認証を受けてからすぐに動けるようにしておきましょう。

登記書類を作成するにあたっては会社の実印の使用が必須なので、用意がまだであるという方は至急作りましょう。

登記書類を提出するのは、定款で定めた本店所在地を管轄する法務局です。

設立日は、「法務局が登記申請書類を受理した日」になるので、大安吉日等特定の日にちにしたい場合は気を付けておきましょう。

提出書類は以下の通りです。

①~⑨を順番に並べ、ホチキス留めをします。①と②は会社実印で契印(見開きページの境目をまたぐように捺印)をしましょう。

順番通りでないと受け付けてもらえないわけではないですが、法務局側が審査をしやすいですし何よりご自身でもチェックがしやすいです。

❿は他と綴じず、クリップ留めで提出しましょう。

登記申請書
登録免許税の収入印紙を貼付したA4紙(登記申請書と契印)
定款
発起人決定書
取締役就任承諾書
代表取締役就任承諾書(取締役が一人の場合は不要)
監査役就任承諾書(設置する場合のみ)
取締役全員の印鑑証明書(取締役会設置会社は代表取締役の印鑑証明書のみ)
資本金の払込を証する書面
印鑑届書
登記すべき事項を保存したCD-ROM

①登記申請書

②登録免許税の収入印紙を貼付したA4紙

法務局のサイト(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor1-1)からダウンロードできます。

③定款

株式会社の場合は、公証役場で認証を受けた定款の謄本を提出します。

④発起人決定書

本店所在地を定める書面です。定款において本店所在地を番地まで定めていない場合は提出が必要です。

発起人全員の住所と氏名を記載し、それぞれの個人実印を捺印します。

⑤取締役就任承諾書

設立する会社で取締役を務めることになる人が、会社に対して「取締役をやります。」という意思表示をする書面です。「株式会社○○御中」という文言が記載されます。

取締役を務める人一人につき1枚必要で、住所と氏名を記載の上個人実印を捺印します。

⑥代表取締役就任承諾書

取締役が一人しかいない場合は自動的にその人が代表権を得るので不要です。書き方としては取締役就任承諾書と同じです。

⑦監査役就任承諾書

設置する場合のみ必要です。書き方としては取締役就任承諾書と同じです。

⑧取締役全員の印鑑証明書

定款認証の段階ですでに取得済みの方が多いとは思いますが、ない場合は早めに取得しましょう。

⑨資本金の払込を証する書面

資本金の払込みにおいて説明した通帳の写しはここで使用します。

  • 資本金の払込を証する書面
  • 通帳の表紙
  • 通帳1ページ目の、名義や口座番号が載っている見開きページ
  • 資本金の振込みがあったことがわかるページ

これらをホチキス留めし、各ページに会社実印で契印します。

❿印鑑届書

会社の印鑑登録をする書面です。個人の場合と違い、会社は印鑑登録が必須なので、こちらの手続きも設立と一緒に行ってしまいましょう。

⓫登記すべき事項を保存したCD-ROM

書面で用意することもできますが、専用の用紙を法務局まで取りに行かなければなりません。

法務省のサイトから雛形となるテキスト(txt)ファイルをダウンロードして作成し、そのデータをCD-ROMに保存して提出することができます。

雛形ダウンロード

http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/minji50-01.html

テキストファイルの作成にあたってはフォントの指定や全角での入力など一定のルールがあるので、法務省のサイトをご確認ください。

記録媒体についてのルール

http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/minji50.html

  • ①~⑨を順番に並べ、ホチキス留めをしたもの
  • ❿印鑑届書 ※ホチキス留めしない
  • ⓫登記すべき事項を保存したCD-ROM

以上3点を法務局に持参して、登記を申請します。

登記書類を最初から一人で完璧に用意するのはなかなか難しいです。設立に先立って、司法書士等の専門家への相談や法務局の無料相談室を利用するなど、余裕のある時期に登記手続きについて確認しておくと良いでしょう。

設立登記後、開業に向けての各種準備・届出

設立登記が完了しても、まだ終わりではありません。実はまだまだ手続きがたくさん残っています。

会社名義の銀行口座を開設しましょう!

設立登記が完了するということは、会社がようやく誕生したということです。この時点をもって、設立した会社の名義で様々な活動が行えるようになります。

まずはその第一歩として、会社名義の銀行口座を開設しましょう!ここで会社の銀行印が活躍するので、最初に会社の実印を作るときに一緒に作っておくことをおススメします。

会社の名前が名義人欄に記載された通帳を受け取った瞬間、いよいよスタートだなという実感が湧いてきますよ。

特に宅建業では、多くの業者が免許を受けた後に保証協会に加入することになります。加入にあたっての入会金の振込み等で早速口座が必要になるので、設立登記が完了したらすぐにでも口座を開設してしまいましょう。

口座は一行のみに開設することがほとんどですが、時間や管理に余裕があるのであれば大手三行の口座を一通り開設する手もあります。使える口座が多ければ、取引相手との振込みにおいてお互いに手数料を節約できます。

行政への各種届出をお忘れなく!

会社設立の登記だけ完了しても、確かに存在はしているものの社会的には通用する立場ではありません。税務署など各署への届出を行うことで初めて、社会的に通用する会社として営業を開始できるのです。

これらの手続きは法律で期限が決まっているものが多いので注意が必要です。

必要となる手続きには大きく分けて次の3つがあります。

1、税金関係の届出(税務署と市町村役場)

2、労働保険関係の届出

3、社会保険関係の届出

これらの手続きは会社の規模や業種によって異なるため、ご自身のみで行うことはあまりおススメできません。最低限の知識だけは持っておくとして、税理士や社会保険労務士等の専門家と一緒に進めていく方が確実です。

1、税金関係の届出

この手続きには、税務署に行うもの(国税)と都道府県及び市町村に行うもの(地方税)の2種類があります。

税務署に提出するものの例

ここでは、国税に関する届出を行います。

提出先は、本店所在地を管轄する税務署です。国税庁のトップページで管轄税務署を調べることができるので、事前に調べておきましょう。

参考:国税庁ホームページ

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm

法人設立届出書

会社を設立したことを税務署に知らせるもの。必須です。

提出期限:設立登記完了から2ヶ月以内

青色申告承認申請書

青色申告を行うために必要となります。

提出期限:設立登記完了から3ヶ月または最初の事業年度の末日のどちらか早い方の前日まで

給与支払事務所等の開設届出書

役員報酬や従業員への給料を税金上の費用としてカウントしてもらうための申請書です。

提出期限:最初の給料を支払う日まで

源泉所得税納金の特例の承認に関する申請書

源泉所得税は毎月納付するのが原則ですが、これを半年に一回、年二回にしてもらえる特例を受けるための申請書です。

提出期限:特になし(いつでも申請ができます。)

  • 棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
  • 減価償却資産の償却方法の届出書(任意)

※添付書類

・定款の写し

・会社登記簿謄本(履歴事項全部証明書)

・設立時貸借対照表

・株主名簿

都道府県税事務所・市町村役場に提出するもの

税務署に対しては国税に関する届出を行いましたが、こちらでは地方税に関する届出を行います。

提出先は都道府県税事務所と市町村役場の2ヶ所なので注意が必要です。こちらも本店所在地を管轄しているのがどこなのかを調べておきましょう。

提出するものは、会社設立届出書です。税務署に提出したものの地方税版とイメージしてください。

提出期限は都道府県によって異なります。東京都の場合は設立登記完了から15日以内です。

添付書類は基本的に定款の写しと履歴事項全部証明書ですが、都道府県や市町村によって扱いが異なるので注意が必要です。

2、労働保険関係の届出

設立時に従業員を一人でも雇う場合、入社日の翌日から10日以内に労働保険の加入手続きが必要となります。

労働保険には、次の2つがあります。

①労災保険 業務や通勤時での病気やケガを保障するもの。労働基準監督署に届出をする。

②雇用保険 失業や休業時の生活を保障するもの。 ハローワークに届出をする。

3、社会保険関係の届出

株式会社では、従業員の社会保険料の半分を会社が負担しなければなりません。よって、従業員に支払う給料に会社が負担する社会保険料を加えたものが、一人分の人件費ということになります。

提出先は年金事務所です。全国の年金事務所で手続きが可能な場合もありますが、本店所在地近くの年金事務所で手続きを行うのがより確実ですし便利です。

これらの手続きはあくまで一例です。会社の規模や業種により必要手続きが変わってきますので全てを一人で行うことは作業量も膨大となりあまりおススメできませんが、税務署や年金事務所等に直接足を運んで手続きを行うことももちろん可能です。

会社設立には、結局いくらかかるのか?

会社設立において絶対に発生する費用は大きく分けて2つ。定款認証に発生する費用と、設立登記をするときに納める登録免許税です。

定款認証の費用

※合同会社は定款認証が不要なのでかかりません。

  • 公証役場に支払う定款認証代 5万円
  • 定款に貼付する収入印紙 4万円(電子定款認証の場合は不要)

※電子定款の場合は収入印紙が不要になりますが、別途有料の電子証明書を取得する必要があります。

  • 定款謄本代 約2000円(発行してもらう部数により異なります。)

登録免許税

少なくとも15万円かかります。

登録免許税は、(資本金の額)×0.7%により算出した金額です。ただし、15万円を下回る場合は一律15万円となります。

例えば、資本金3,000万円の会社を設立しようとする場合の登録免許税は

3,000万×0.7% = 210,000円 です。

一方、資本金100万円の会社を設立しようとする場合の登録免許税は

100万円×0.7% = 7,000円 ではなくて15万円です。

また、これに加えて行政書士や司法書士等の専門家に手続を依頼した場合はその報酬も別途支払わなければなりません。

株式会社を設立する場合は、どれだけ費用を抑えたとしても最低24~5万円はかかるとお考え下さい。

5つのポイントを最後におさらい!

  • 事業目的
    「不動産の売買、賃貸、管理、交換およびこれらの仲介」というキーワードは必須。他業種との兼業は可能。
  • 資本金
    いくらでも免許は受けられるが、100万円が一般的。
  • 組織
    株式会社でも合同会社でも宅建免許は受けられる。おススメは株式会社。
  • 役員
    宅建士は役員でも一般従業員でもどちらでもよい。
  • 設立費用
    株式会社の場合は24~5万円はかかる。

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