保証協会の仕組みと加入するメリット・デメリット 


不動産業、つまり宅建業は扱う商品の額が大きいため、何かトラブルがあった場合に高額な損害を賠償しなければならなくなる場合があります。

しかし、全ての業者がすぐに賠償金を支払えるわけではありません。そうなるとお客様は泣き寝入りするしかないのでしょうか・・・?

そんなことはありません。お客様への賠償をしっかり行うために、宅建業者には営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付が義務づけられています。何かあったときに備えて、保険をかけておくイメージです。

宅建業免許取得にあたり、「保証協会」や「ハト、ウサギ」というワードを耳にすることがあると思います。
多くの宅建業者は、保証協会に入会し弁済業務保証金分担金の納付をしています。保証協会への入会、弁済業務保証金分担金の納付・・・それらが一体何を意味するのか、このページで解説していきます。

「営業保証金」と「弁済業務保証金分担金」とは?

冒頭で述べたように、宅建業は取り扱う商品が不動産という高額商品であるため、何かトラブルがあったときに莫大な額の損害が生じる場合があります。

しかし、全ての業者が満額で損害を賠償できるわけではないでしょう。無い袖は振れませんから、損害賠償をするのにも限界があります。

そのような事態にお客様が泣き寝入りをしないために、宅建業者は営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付により事前に保険をかけておかなければなりません。宅建業を開始する前に国にお金を預けておいて、もしもの場合は取り急ぎそこから賠償をしようというものです。

これらは両方行う必要はなく、このどちらかを自由に選択して行うことができます。

営業保証金を供託する場合

用意する金額 1,000万円
(+支店1つにつき500万円)
預ける場所 本店所在地を管轄する法務局
預けるタイミング 宅建業免許を受けた後

弁済業務保証金分担金を納付する場合

用意する金額 60万円
(+支店1つにつき30万円)
預ける場所 加入する保証協会
預けるタイミング 保証協会加入時

このように、保証協会に加入せず営業保証金を供託する場合と保証協会に加入し弁済業務保証金分担金の納付をする場合とでは用意する金額が大きく異なります。

保証協会に加入する場合は別途入会金や年会費等を用意する必要がありますが、それでも100万円台に収まります。

保証協会に加入せず営業保証金を供託するか、保証協会に加入し弁済業務保証金分担金を納付するか、業者それぞれが自由に選択することができますが、金額上の理由から大多数の宅建業者が保証協会への加入を選択しています。

お客様への賠償はどのように行われる?

営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付によって保険をかけておくという感覚はなんとなくお分かりいただけたことと思います。

では、お客様はどれくらいの賠償を受けられるのでしょうか?

実際に何かトラブルがあり業者側に賠償責任が認められた場合、お客様は「営業保証金の額」を限度に賠償を受けることができるとされています。これは業者が保証協会に加入していてもいなくても同じです。

(例)本店を1つだけ設けている業者の場合

お客様は、1,000万円を限度に賠償を受けることができる。
(本店用に供託すべき営業保証金が1,000万円であることから。)

(例)本店のほか、支店を1つ設けている業者の場合

お客様は、1,500万円を限度に賠償を受けることができる。
(本店用に供託すべき営業保証金が1,000万円、支店1つにつき供託すべき営業保証金が500万円であることから。)

注意が必要なのは、保証協会に加入していても賠償金額が納付した弁済業務保証金分担金を基に計算されるものではないという点です。保証協会に加入していたからといって、お客様への賠償額の限度が60万円になる・・・なんてことはありません。

保証協会に加入していてもいなくても、賠償限度額の最低ラインは1,000万円です。

「ちょっと待った!ウチは保証協会に弁済業務保証金分担金の60万円しか納付していないぞ!?」
このように思われた方もいるかもしれません。

営業保証金を供託している場合はそこが賠償の支払い原資となりますが、保証協会に加入し弁済業務保証金分担金を納付している場合は、保証協会が支払い分を立て替えてくれます。

ポイントは「立て替えてくれる」という点です。保証協会はとりあえずお客様に賠償金を支払い、お客様に対する賠償は解決してくれます。しかし、保証協会が立て替えてくれた分は業者が保証協会に返済しなければなりません。

実際に賠償がされた場合、業者としてはどのように対処すべきなのか、以下の例をご参照ください。

(例)東京都で本店1つのみで経営している宅建業者が、お客様に対し1,000万円の賠償責任を負った。

営業保証金を供託している業者の場合

本店最寄りの法務局に供託している1,000万円がお客様に支払われます。この1,000万円は宅建業を営む上で常に預けておかなければならない金額です。

よって、供託している1,000万円から支払いがなされた場合は速やかに補充をしなければなりません。
この例の場合は、免許を受けている東京都知事から「不足分を法務局に供託してください」という内容の通知が届きます。

その通知が届いてから2週間以内に不足分を供託し、供託日から2週間以内に東京都知事に供託したことを届け出なければなりません。期限を過ぎると、最悪宅建業免許が取り消される場合があります。

保証協会に加入している業者の場合

取り急ぎ、保証協会が賠償金の1,000万円を立て替えてくれます。

その後、保証協会から「立て替えた分を保証協会にお支払いください」という内容の通知が届きます。(還付充当金の納付と呼ばれます。)

その通知が届いてから2週間以内に立替分を協会に支払うことができなければ、協会を退会させられてしまいます!

協会を退会させられる程度なら大したことないんじゃ・・・?とお考えの方、そんなことはありません。

保証協会に加入していない場合は営業保証金を供託する必要がありましたよね。退会させられた日から1週間以内に営業保証金1,000万円を供託しなければなりません。期限を過ぎると、最悪の場合宅建業免許取り消しとなります。

保証協会の立替分を支払うことができない業者が営業保証金を供託できるとは考えにくいので、こうなってしまえば事実上の廃業ですね・・・。

保証協会に加入しよう!

保証協会に加入せず営業保証金を供託する場合と、加入して弁済業務保証金分担金を納付する場合の違いについては大まかにお分かりいただけたと思います。

ここからは、保証協会に加入する場合のメリットや手続きの流れについて解説していきます。

加入のメリットとは?

最大のポイントはなんといっても金銭的負担の少なさにあると思います。他にもこのようなメリットがあります。

  • 契約書や重要事項説明書のひな形がダウンロードできる
  • 業者向けの実務セミナー等に参加できる
  • 協会員同士の交流
    (業者同士の交流ができ、仕事につなげやすいです)
  • お客様への安心感
    (「不動産業者の大きな団体に加入している」という事実だけでも、お客様への安心感としてはプラスになります。)

「ハト」と「ウサギ」とは? どちらに入ればいいの?

保証協会について調べたり他の宅建業者から話を聞いたりしていると、「ハト」や「ウサギ」というワードを耳にすることがあると思います。これらは、保証協会の通称なのです。

正式名称はそれぞれ次の通りです。

ハト 全国宅地建物取引業協会連合会
ウサギ 全日本不動産協会

それぞれがハトまたはウサギをシンボルマークとしているため、一般的にこのように呼ばれています。
保証協会はこれら2つがあり、どちらに加入するかは自由ですが両方に加入することはできません。

加入者が受けられる各種サービスや入会金等の費用、入会手続きの手間といった事項を比較しても、両者には大きな差がないというのが現状です。競合相手が1社しかいないので、「あっちが値下げしたのならウチも値下げだ!」といった動きが起こりやすいのです。

とはいえ、両者とも「ウチに入ってほしい!」と考えているのは事実ですから、入会金の値下げキャンペーン等が行われることがあります。ご自身が宅建業を始められる時期にちょうどキャンペーンを実施している方に加入するなど、費用や窓口へのアクセス等を考慮してどちらに加入するのかを選択されると良いと思います。

調べたらなんか支部が沢山ある・・・

保証協会には都道府県多単位、市区町村単位で多くの支部があり、細かく管轄が分かれています。原則として「本店所在地の最寄りの支部」に加入することになります。ご自身の管轄がどの支部なのか、一度協会に確認しておくとよいでしょう。

加入手続きの大まかな流れ

保証協会への加入手続きには、1ヶ月~1ヶ月半程度の時間を要する場合があります。

そのため、都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出してすぐに加入手続きに移り、免許が下りるまで同時進行で進めていく方がほとんどです。

簡単な流れは次の通りです。

【4月1日に都道府県庁への免許申請が完了した場合】

協会の支部によっては、入会金を支払うタイミングや事務所での面談時期等が前後したり、別途説明会への参加を求められることもあります。協会から加入手続きの書類を取り寄せると、加入までのスケジュールを同封して送ってくれるので、そちらも併せてご確認ください。

1.都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出する

保証協会への加入手続きは、都道府県庁に宅建業免許を申請した後で行うことになります。まずはこちらから行いましょう。

都道府県庁への提出書類は、提出用の原本1部とこちらの控え用の副本(コピー)1部を用意しておく必要があります。書類が受理されると、副本に受領印を押してもらえます。これが申請を行った証拠になります。後ほど保証協会での加入手続きで早速使用しますので、必ずもらうようにしてください。

2.保証協会への加入書類を提出する

書類作成はお早めに!

保証協会の加入手続きは、都道府県庁に書類を提出した後すぐに行うことができます。このタイミングで行うことで、都道府県庁から免許が下りるのを待つ間に保証協会への加入手続きを進めることができるので強くおススメします!

よって、保証協会への加入手続きに必要な書類は都道府県庁に書類を提出する前に用意してしまいましょう。都道府県庁に提出する書類と同時に作成を進めておきましょう。

加入手続き書類はどこで用意する?

加入手続きに必要な書類は、保証協会に連絡して取り寄せることができます。
加入希望業者向けのダイヤルや、支部に直接連絡して「入会したいので書類を送ってください!」とお願いすれば、書類を送ってくれるだけでなく必要に応じて手続きの流れを説明してくれます。

会社名義の口座のご用意を!

後に支払うことになる入会金や弁済業務保証金分担金、継続的に支払う年会費といったお金は原則として会社名義の口座からの振込みや引落しで支払うことになります。

口座振替依頼書類も加入手続き書類に含まれているので、まだ会社名義の口座を開設していない場合はこの段階で用意しておきましょう。代表者の個人の名義の口座等は使えません。必ず会社名義の口座をご用意ください。

3.保証証協会に入会金や年会費、弁済業務保証金分担金を納付する

保証協会に「免許が下りました!」という連絡をすると、いよいよ入会金等の支払いになります。支払額は保証協会から連絡があるのでそちらをご参照ください。

トータルの金額は弁済業務保証金分担金を含めて150万円ほどですが、キャンペーンや加入時期によって多少の差があります。

支部によっては会社名義の口座からの入金しか受け付けてもらえない場合があるのでお気を付けください。

4.事務所にて面談

協会や支部によって時期は異なりますが、保証協会の方を会社に招いての面談があります。会社の代表者と、専任の宅地建物取引士が参加します。

これからどのように事業を行うつもりなのか、事務所はちゃんと整備されているのか、といった事項の軽い確認なので、そんなに身構える必要はないです。

他にも、支部での研修や説明会に参加する必要がある場合がありますので、支部に確認をしておきましょう。

5.都道府県庁から免許が下りた旨の通知ハガキが届く

都道府県庁に申請書類を提出してから約1ヶ月後(大臣免許の場合は約2ヶ月後)、事務所宛てに免許が下りた旨の通知ハガキが届きます。

加入手続きの時にも説明があると思いますが、このハガキを保証協会にFAXで送ることで次の手続き段階に進みます。

保証協会にとって業者は「お客様」です。ぜひ入ってほしいと思っているので、基本的に親切に教えてくれます。わからないことがあれば協会に気軽に問い合わせてみましょう。

加入するのは「保証協会」だけではない?

ここまで読んでくださった方は、「あーそうなのね、『保証協会』ってやつに加入すればいいのね。」と認識されたと思いますが、正確に言うとそうではありません。

宅建業者や行政書士等の専門家は一般的に「保証協会」と呼んでいますが、保証協会以外にも加入する団体があります。
とはいっても、手続き自体は一回でまとめて進むのでご安心ください。

加入する団体

①宅建業協会または不動産協会(ハトまたはウサギの本部のようなもの)
②保証協会
③指定流通機構(レインズ)
④政治連盟

加入する団体は複数ありますが、強制ではないものもあります。

加入に必要な書類は協会が一括で用意してくれますし、提出も協会の窓口で一括で受け付けてもらえますのでご安心ください。とはいっても、加入する団体が複数ある以上は用意する書類もそれだけ多くなるので、しつこいようですが書類の準備には余裕をもって動けるようにしておきましょう。

加入しなくてもいい場合がある?

金銭的な負担が減るだけでなく、協会が提供してくれる様々な特典が受けられる・・・。いいことばかりのように思えますが、一部の方にとっては加入しない方がお得な場合があります。

それは、「期間限定で宅建業を行うつもりの方」です。

営業保証金や弁済業務保証金分担金は何かトラブルがあったときに備えて国に預けておく保険金のようなものですから、宅建業をもうやらないというのであれば返してもらうことができます。しかし、保証協会に加入した場合に支払った入会金や年会費等は宅建業を辞めても返してもらうことができません。

例えば、大きな土地を所有していてそれを切り売りするために一時的に宅建業免許を取得する必要があるなど、宅建業を営むのが一時的であることがすでに確定しているという場合は、営業保証金を供託する方が実はお得です。

営業保証金を供託した場合

供託した1,000万円が戻ってくる。
※別途手続きが必要です。6ヶ月ほどかかります。

保証協会に加入した場合

弁済業務保証金分担金の60万円は戻ってくる。
※入会金や年会費は戻ってきません。

もちろん、何か賠償等の支払いが必要である場合等は支払いをして残った分のみが戻ってきます。また、官報への掲載等の手続きのための実費もかかります。

また、営業保証金を供託して宅建業を営んでいたとしても途中から保証協会に加入することは可能なので、一時的とは言ったものの継続的に行いたいと思った場合は保証協会に加入すると良いでしょう。

まとめ

  • 宅建業者は、何かトラブルがあった場合に備えて一定の金額を預けておかなければならない。
  • 法務局に営業保証金を供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付する方法がある。
  • 営業保証金は最低1,000万円だが、弁済業務保証金分担金は最低60万円で済むので、大多数の業者が保証協会への加入を選択している。※別途入会金等がかかる。
  • 保証協会に加入すれば、契約書の書式ダウンロードや各種セミナー等の特典を受けられる。
  • 保証協会には「ハト」と「ウサギ」の2つがあり、どちらに加入するかは自由だが2つ同時には加入できない。
  • 加入に必要な書類は、都道府県庁に提出する書類と一緒に準備しておく。

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