宅建業の会社で代表者をお務めの方の中には、宅建業以外の業種を行う別会社や資産管理会社を経営するつもりの方もいらっしゃると思います。
また、宅建業以外の会社を経営しつつ、新たに宅建業の会社のを設立したいという場合もあるでしょう。
宅建業免許では、代表者や宅地建物取引士のような役職者の常勤性をとても重視しています。また、宅建業を行う事務所の所在や専有性も重視しています。
そのため、宅建業を行う会社とは別会社を経営している場合には通常の免許申請よりも注意が必要となる点が多いです。
本ページでは、具体的にどのような点に注意し、どのような対応をすれば良いか解説していきます。
代表者が専任宅地建物取引士を務めることはできません。
専任宅地建物取引士は、別会社での勤務が一切認められていません。別会社の代表に就任するのも同様に認められていないので、専任宅地建物取引士を務めている状態で別会社を設立したり代表者に就任したりすることはできません。
具体的にどのような場合が該当し、どのような対応を求められるのか、いくつか事例をご紹介します。
宅建業者の社長が専任宅地建物取引士を務めていて、社長自身が代表者を務める別法人を設立したい場合
- 専任宅地建物取引士を別の方に変更する。
- 設立予定の別法人の代表者を別の方にお願いする。
コンサルティング業を営む会社の社長が、自身を代表者兼専任宅地建物取引士とする別法人を設立したい場合
- 設立予定の会社の専任宅地建物取引士を別の方にお願いする。
- コンサルティング業の会社の代表者を別の方に変更する。
いずれにしても、「専任宅地建物取引士」と「別会社の社長」を兼任している状態では宅建業免許の要件を満たすことができないので、どちらかを別の方に交代する必要があります。
なお、代表者を兼任することは問題ありません。専任宅地建物取引士に就任せず、宅建業の会社を含め複数の会社を経営されている方も実際にいらっしゃいます。
別会社での勤務が一切認められていない専任宅地建物取引士ですが、例外が一つあります。それは、別会社で非常勤の取締役に就任する場合です。
非常勤の取締役に就任している会社から「非常勤証明書」を発行してもらうことで非常勤であることを示すことができれば、別会社で勤務しているものとは扱われず、専任宅地建物取引士の就任に影響しません。
ただし、都道府県により取扱いが異なりますので、該当する方は事前に確認しましょう。
別会社の本店所在地に注意しましょう。
宅建業免許では、別会社と事務所を共有し同居することが原則として認められていません。
やむを得ず同居する場合には、高さ180cm以上のパーティションで事務所内を区分する等の対応を求められます。
宅建業以外の別会社を経営する場合には、本店所在地を同じ場所にするということもあるでしょうから、同居が可能な間取りであるか等の注意が必要です。
なお、別法人と事務所を共有しているか否かは会社登記簿上の本店所在地によって判断されます。
業務の都合上登記簿上の本店所在地だけは同一にしているものの、実際の営業所は別の場所にあるという場合でも、同居しているものとして扱われます。
代表者が同じであっても、それぞれ別会社であることに変わりはありません。経営母体が同じであるためそのような意識がつい薄れてしまいがちですが、無関係な別会社と同居していることと同じであると認識するようにしましょう。
なお、別会社と事務所を共有する場合の注意点については下記ページにて詳細にご案内しております。こちらも併せてご参照ください。
間取り等の問題で事務所にパーティションを設置して区切ることが現実的に難しい場合は、宅建業を行う会社または別会社のいずれかの登記簿上の本店所在地を別の場所に移す等の対応が必要となります。
常勤するのは宅建業の会社?宅建業免許以外の許認可にも注意!
一人で複数の会社に常勤することはできないので、複数の会社を経営している場合はいずれか一つの会社に常勤、それ以外は非常勤という状態になります。
行政の見解として、「宅建業の会社の代表者は宅建業の会社に常勤していて当然」という考え方が根本にあります。そのため、基本的に宅建業免許の申請時には宅建業の会社に常勤、それ以外は非常勤であるものとして申請します。
ただし、場合によっては宅建業を行う会社への常勤性が認められないこともあります。そのような場合は、「政令使用人」という社長代理のような立場の方を別途設置することで対応します。
政令使用人は登記簿上の役員が就任する必要はありませんが、宅建業免許においては役員と同等の扱いを受けます。
会社に専属で常勤できる方が就任する必要があるため、ほとんどの場合は専任宅地建物取引士の方が政令使用人を務めています。専任宅地建物取引士もまた、会社に専属で常勤できる方である必要があるからです。
また、宅建業を行う会社とは別会社において建設業等の別の許認可を受けている場合は注意が必要です。
許認可の種類によっては、代表者の兼業が一切認められていないこともあるので、行政側に事前に確認しましょう。
以上の通り、宅建業を行う会社とは別の会社を経営する場合には「人員(専任宅地建物取引士)」と「場所(事務所の所在地)」について特に注意が必要です。
専任宅地建物取引士等の役職者が専属で勤めることができること、事務所を宅建業の会社専用で使用できることを特に意識するようにしましょう。
まとめ
- 専任宅地建物取引士が別会社の代表を務めることはできない。
- 宅建業を行う会社と別の会社を同じフロアに同居させる場合は、パーティションで区切る等の対応が必要となる。
- 別会社と同居しているか否かは、登記簿上の本店所在地によって判断される。
- 代表者等の経営母体が同じでも、それぞれ別会社であることを強く意識する。
- 宅建業の会社を含め複数の会社を経営している場合でも、原則として宅建業の会社に常勤であるものとして取り扱う。
- 代表者として宅建業の会社への常勤性が認められない場合は、政令使用人という社長代理のような立場の人員を配置する。
- 宅建業免許以外の許認可では、代表者の兼業が認められない場合もあるので、事前に確認する。