宅地建物取引士証を交付されて宅地建物取引士として仕事をされている皆さんは、必ずどこかの都道府県において「資格登録」を受けているはずです。
登録事項に変更があった場合や宅地建物取引士証の更新、そのための法定講習の受講といった各種手続きは、資格登録を受けている都道府県で行うことになります。
東京都で資格登録を受けて東京都にある宅建業者に勤めている、というような場合は特に問題はないでしょうが、例えば転勤等で大阪にある宅建業者に勤めることになった場合はどうでしょう。
勤務地が変わった場合でも、何もしなければ資格登録は東京都のままです。そうなると、大阪に転勤になったのに変更や更新の手続きは東京で行わなければなりません。郵送でできる手続きもありますが、法定講習の受講等は直接行かなければならないので、いちいち東京に戻るのは面倒ですよね。
そんな面倒を解消してくれるのが、「登録の移転」という手続きです。登録の移転とはどのように行う手続きなのか見ていきましょう。
「登録の移転」ができるのはどんなとき?
登録の移転は、「現在資格登録をしている都道府県とは別の都道府県に所在する宅建業の事務所に勤めることになったとき」にすることができます。※現在勤めている場合でも可能です。
例えば、東京都で資格登録を受けている人が神奈川県にある宅建業者の事務所に勤務することになった場合(または現在神奈川県にある宅建業者の事務所に勤めている場合)、登録の移転をして神奈川県で資格登録を受けることができます。
ここで気を付けなければならないのは、住所が変わっただけでは登録の移転ができないという点です。
例えば、東京都で資格登録を受けている人が神奈川県に引っ越しても登録の移転はできません。
なお、登録の移転は任意です。別の都道府県にある宅建業者の事務所に勤務することになったからといって必ず登録の移転をしなければならないわけではありません。
各種変更手続きは郵送でやればいいし、法定講習も5年に1回帰省ついでに受けに行けばいいかな、といった考えから、登録の移転をしない方もいらっしゃいます。
また、登録の移転を行うと宅地建物取引士の登録番号も変わるので、名刺に登録番号を記載している場合等は書き換える必要があるので気を付けましょう。
手続きに移る前に!変更事項はありませんか?
宅地建物取引士は、次の4つの事項につき変更が生じた場合に変更の届出をしないといけないことになっています。変更があったのにその届出がなされていないと、登録の移転申請を受けつけてもらえない場合があるので気を付けましょう。
少なくとも「勤務先」に関しては、「これからこの都道府県にある宅建業者に勤めます」ということを登録しておかなければならないので、最新の勤務先にしておくことが必要です。
変更がある場合は、現時点で資格登録を受けている都道府県庁にて変更の届出をしましょう。必要書類は次の通りです。※東京都の場合
申請書は各都道府県庁のホームページからダウンロードできます。
東京都の場合はこちら
http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/820-02-2-1sinseiyousiki.htm
変更があった場合に届出が必要な事項
- 氏名(婚姻による改姓を含む)
- 住所
- 本籍
- 勤務先(商号の変更を含む)「IT業者から広告代理店に転職した」といった変更については届出をする必要はありません。
変更事項に関わらず必要
宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書
変更があった箇所だけ記載します。
変更事項が「氏名」の場合に追加で必要
- 戸籍謄本 ※発行から3ヶ月以内のもので、氏名の変更がわかるもの
- 宅地建物取引士証書換え交付申請書
- 宅地建物取引士証本体 ※新しく作り直すためです。
- 顔写真(3cm×2.4cm 免許証サイズ)
変更事項が「住所」の場合に追加で必要
- 住民票
発行から3ヶ月以内のもので、マイナンバーの記載がないもの - 宅地建物取引士証書換え交付申請書
- 宅地建物取引士証本体
運転免許証のように、裏面に新住所を加筆するためです。
変更事項が「本籍」の場合に追加で必要
戸籍謄本
変更事項が「勤務先」の場合に追加で必要
- 入社証明書
入社の場合のみ - 退職証明書
退職の場合のみ
※商号変更の場合の追加提出書類はありませんが、会社として行った商号変更手続きの書類のコピーを持参するとより確実でしょう。
変更以外にも要注意!有効期限を確認しましょう。
宅地建物取引士証には、交付から5年間の有効期限があります。登録の移転には1ヶ月程度の時間を要するので、有効期限ギリギリに申請をしてしまうと登録の移転の完了を待つ間に宅地建物取引士証の有効期限が切れてしまいます。
いずれにせよ、登録の移転と宅地建物取引士証の更新という別々の手続きを同時進行で行うことはおススメできません。
繰り返しにはなりますが、登録の移転は任意でありいつまでにしなければならないという期限もありません。宅地建物取引士証の有効期限が迫っている(1ヶ月が目安です)場合は、登録の移転をする前に現在登録を受けている都道府県で法定講習を受講して宅地建物取引士証を更新してから行うと良いでしょう。
いよいよ「登録の移転」の手続きへ!どのように行う?
ここからは、実際の手続きについて見ていきましょう。
ここで気を付けなければならないのは、書類の提出先は「現在資格登録を受けている(移転前の)都道府県の窓口」で、必要書類は「登録を移転する先の都道府県」によるという点です。書類の提出先と必要書類を設定している都道府県が異なることに気を付けましょう。
申請先
現在資格登録を受けている(移転前の)都道府県の窓口
費用
登録手数料 | 8,000円 |
---|---|
新しい宅地建物取引士証の発行手数料 | 4,500円 |
これらの費用は、登録を移転する先の都道府県に支払います。そのため、移転先の都道府県収入証紙を事前に購入しておく必要があります。詳しくは移転先の都道府県に確認しましょう。
申請から交付・受領までにかかる期間
30~40日かかります。
宅地建物取引士証の交付を受けたことがある方は、初めて交付を受けたときと同じくらいかかるものと考えておきましょう。
必要書類
あくまで一般的な書類です。都道府県により異なるので、移転先の都道府県に確認しましょう。
必要書類 | 備考 |
---|---|
登録移転申請書 | 書式が決まっているので、必要事項を記入して作成します。各都道府県のサイトからダウンロードすることができます。 東京都の場合はこちら http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/820-02-4-2sinseiyousiki.htm |
宅地建物取引業に従事することを証する書面(就労証明書や入社証明書) | 「宅地建物取引業に従事している」旨の記載が必要となります。こちらも各都道府県のサイトから雛形をダウンロードできます。 東京都の場合はこちら http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/820-02-4-2sinseiyousiki.htm |
宅地建物取引士証交付申請書 | 書式が決まっているので、必要事項を記入して作成します。各都道府県のサイトからダウンロードすることができます。 東京都の場合はこちら http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/820-02-4-2sinseiyousiki.htm |
顔写真 3枚 | 3cm×2.4cmの免許証サイズです。 1枚は①の登録移転申請書に、1枚は③の宅地建物取引士証交付申請書にそれぞれ貼付し、もう1枚はそのまま提出します(新しい宅地建物取引士証に使用されます)。 |
発行手数料 | 8,000円+4,500円
合計12,500円 |
移転前に使用していた宅地建物取引士証は失効するので、移転前に登録を受けていた都道府県に返納しましょう。現在宅地建物取引士証を使用する仕事に就いていてギリギリまで返納をしたくない場合は、返納と引き換えに新しい宅地建物取引士証を受け取るという「引き換え交付」の申請をすることができます。詳しくは書類を提出する際に確認しましょう。
登録の移転が無事に完了すると、登録先の都道府県が新しくなった宅地建物取引士証が移転先の都道府県から交付されます。顔写真や資格登録を受けている都道府県、登録番号等が新しくなった宅地建物取引士証の交付を受けることになりますが、有効期限だけは移転前のものを引き継ぐので注意しましょう。例えば登録の移転を申請した時点で宅地建物取引士証の有効期限が残り1年だった場合、移転後に交付される宅地建物取引士証の有効期限も残り1年のままです。
以上が、宅地建物取引士資格登録移転手続きの流れです。
登録の移転手続きやその後の対応(主に登録番号の変更よるもの)は面倒かもしれませんが、一度やってしまえば済むものと言えます。変更届や法定講習のために郵送や長距離の移動をしなければならないのは、いわば継続的な面倒です。
登録の移転は必ずやらなければならない手続きではないので、どちらの方が面倒でないかを比較した上で、やるかどうかを決めると良いと思います。
まとめ
- 資格登録を受けている都道府県とは別の都道府県にある宅建業者の事務所に勤務することになった場合、その都道府県に資格登録の移転をすることができる。
- 登録の移転は任意なので、必ずしなければいけないわけではない。
- 登録の移転を行う前に、一定事項に変更がある場合は現時点で資格登録を受けている都道府県に変更届を出さなければならない。
- 宅地建物取引士証の有効期限が迫っている場合は、宅地建物取引士証の更新をしてから移転の手続きに着手すると良い。
- 登録の移転申請は、現時点で資格登録を受けている都道府県の窓口にて行う。
- 登録の移転が完了すると、現在持っている宅地建物取引士証は失効し、移転先の都道府県から新しい宅地建物取引士証が交付される。
- 新しい宅地建物取引士証の有効期限は、登録の移転をする前の宅地建物取引士証の有効期限と同じである。