宅建業免許の取得をお考えの業者さんの中には、すでに一定の収益を上げている主業務があり、宅建業はサブの業務として行おうとお考えの業者さんもいらっしゃいます。
自社物件の賃貸を行う不動産賃貸業や区分所有建物の管理業といった宅建業免許が不要な不動産関連の事業を主業務としている業者さんもいらっしゃいますし、コンサル業や飲食店経営といった不動産とは関係のない事業を主業務としている業者さんもいらっしゃいます。
当事務所にも、宅建業免許を受けたからには不動産取引を主業務にしていかなければならないのかというご相談をお寄せいただくことがあります。宅建業をメインの事業にしなければならないのか、本ページで解説していきます。
宅建業を主業務としなくても、宅建業免許は受けられます。
宅建業を主業務とするかどうかは、宅建業免許の審査において関係ありません。もちろん、他事業との兼業が認められていないわけでもありません。むしろ宅建業以外に行っている事業の内容を申請書類に記載するほどです。
そのため、不動産賃貸業を営む業者さんでも、飲食店を経営する業者さんでも、宅建業免許を受けることはできます。
主業務でないとしても、営業は続けましょう。
宅建業が主業務でない場合でも宅建業免許を受けることはできますが、宅建業免許を受けただけで一切営業しない状態は避けましょう。
行政側としても不必要な免許を出すことは本意ではないので、宅建業の営業実態がない、10年単位で全く実績があげられていないといった場合には宅建業免許の更新拒否や取消しになってしまうことがあります。
専任宅地建物取引士の設置に関する注意点!
宅建業免許を受けるに当たっては、宅建業に従事する人数の5人に1人以上の割合で専任宅地建物取引士を設置する必要があります。
このとき、会社の代表者と専任宅地建物取引士は必ず人数に加えますが、宅建業に携わる予定のない従業員の方まで人数に加える必要はありません。すでに宅建業以外の主業務を行っている業者さんの場合は、社内に宅建業の部署を作るようなものであるとお考えください。
また、専任宅地建物取引士に就任される方は社内で別業務に従事していない方が望ましいです。社内での勤務実態については現状審査の対象とはなっていませんが、専任性を考えると社内において宅建業に専属で従事できる方であることが望ましいでしょう。
加えて、建設業営業許可やマンション管理業登録といった宅建業免許とは別の許認可を受けている場合も注意が必要です。許認可においては、得てして特定の資格を持った方や講習を受けた方を専属で置くことが求められます。許認可の種類によっては、同じ会社内であっても専任宅地建物取引士との兼務が認められていない場合があるので、すでに何らかの許認可を受けている場合は行政に事前に確認しましょう。
事務所の間取りに関する注意点!
宅建業免許では、事務所内の写真を撮って申請書類に添付することを求められており、事務所の要件が比較的厳しいといえます。満たさなければならない要件として代表的なものは下記の通りです。
- 事務所内に、宅建業に従事する人数分の机と椅子、接客用の対面で座れる机と椅子を設置する。
- 事務所専用の固定電話番号を取得し、固定電話機を設置する。
- 他社と同居する場合は、自社のスペースを他社のスペースと区切らなければならない。
- 自宅を事務所とする場合は、事務所スペースを生活スペースと区切らなければならない。
同じ会社内で宅建業免許を受ける場合は「他社と同居」という扱いになりません。主業務を行う部署と厳格に区切る必要はなく、接客スペースや固定電話番号も既存のものがあればそのまま使用できます。
ただし、情報保護の観点から宅建業の担当部署専用のエリアを設けるよう求められる可能性もあります。別の部屋やブースを用意できれば理想的ですが、簡単なパーティション等で区切るだけでも良いでしょう。
自宅で事業を行っている場合は、自宅兼事務所としての申請が必要となります。間取りによっては申請ができないこともあるので、行政に確認しておきましょう。
登記簿上の本店所在地は、宅建業を行う事務所の住所と一致させなければなりません。
宅建業免許では、法人登記簿上の本店所在地と宅建業を営む事務所の住所が一致していなければいけません。
現在の営業形態によっては、登記簿上の本店と実際の業務を行っている事務所の住所が異なるということもあるでしょう。
法人登記簿上の本店所在地と宅建業を営む事務所の住所が一致していない場合は、宅建業免許申請の前に本店所在地の移転登記を済ませておきましょう。
登記簿上の本店所在地と別に、宅建業専用の支店を設けることはできる?
登記簿上の本店所在地において宅建業を行わず、宅建業用の支店を別に設けることはできません。本店において一切宅建業を行うつもりがなかったとしても、行政からは登記簿上の本店所在地では宅建業を行うものと判断されます。
詳細は別ページにて解説しておりますので、下記のリンクをご参照ください。
宅建業をメインにするつもりではなくても、宅建業免許を受けることは可能です。ただし、メインではないからといって全く実績がない状態が長く続いてしまうと、宅建業免許を維持できなくなるおそれがあります。
また、すでに営んでいる事業との兼ね合いにも注意するようにしましょう。
当事務所では、主業務の他に宅建業を始めたい業者さんからのご相談も多く頂いております。現状をお伺いした上で宅建業免許の取得をサポートいたしますので、お困りの業者さんは是非ご相談ください!
まとめ
- すでに宅建業とは別の主業務を営んでいる場合でも、宅建業免許は取得できる。
- 宅建業免許を取得した以上は、実績ゼロの状態を長く続けてしまうと免許の更新拒否や取消しの事由に該当し、宅建業免許を維持できなくなるおそれがある。
- 専任宅地建物取引士は、できるだけ社内で別の事業を担当せず、宅建業の業務に専念できる人員に務めてもらうのが望ましい。
- 既存の業務に加えて同一法人において宅建業免許を取得する場合は、「別法人と同居」という扱いにならない。
- 宅建業を営む事務所の住所は、登記簿上の本店所在地と一致していなければならない。
- 本店所在地において宅建業を一切行わず、別の営業所のみで宅建業を営むという形態は認められない。