宅建業を開業するにあたって、実際に営業を行う場所は大切な要素の一つです。
開業する場所として、サーブコープさんやリージャスさん、ハローオフィスさん、アセットデザインさんといったレンタルオフィスを利用する方が最近増えてきています。
ビルの一室を借りるよりは費用が抑えられる上、本店所在地として登記ができるものも多く、場合によってはビルの一室を安く借りられるのと同じになるなんてことも。
とはいっても、レンタルオフィスで不動産業を開業する場合、事務所としてワンルームを賃借するときと比較して注意すべき点は増えてきます。本ページで解説していきます。
レンタルオフィスで不動産業を開業するメリットとは?
レンタルオフィスは、ビルの一室を借りるというものではなく、より小さな区画を短いスパンで借りるというイメージです。そのため、ビルの一室を借りる場合と比べて費用をかなり抑えることができます。
また最近では、ウォーターサーバーやWi-Fi環境といった設備があらかじめ整えられているものが多く、一からオフィス作りをしなくて済むという利点もあります。
借りる区画が小さいので、近い区画を借りている他の事業者さんとの距離も近く、ビジネスチャンスも広がりやすいかもしれません。
レンタルオフィスで不動産業を開業する際の注意点とは?
宅建業を営む事務所として認められるためには「一ヶ所に定着していて、簡単に移転しない」という原則があります。つまり、契約期間が短く移転が簡単にできてしまうレンタルオフィスは定着性に乏しく、本来は宅建業の事務所として使用するにはそぐわないものなのです。
間取り等を工夫すれば事務所として認められるケースもありますが、通常のオフィスビルよりはクリアしなければならない条件が増えてきます。
まずは前提として特に注意していただきたい点を挙げます。弊所にも多く相談が寄せられる内容でもあります。
自社のスペースが他社のスペースと壁で区切られていて、なおかつビルの入り口から他社のスペースを一切通らずに自社のスペースにたどり着けること
他社との同居を前提としたいわゆる「シェアオフィス」は、事務所としての独立性が認められないためNGです。
自社のスペースを24時間365日自社のみが使用できること
自社で借りたスペースは、自社だけが使える契約になっていなければなりません。同じスペースを、時間帯によって関係のない会社が使用できてしまう状況があるのはNGです。
長期間でレンタル可能であること。
契約期間は少なくとも1年以上が望ましいです。
契約期間が短すぎると、事務所としての定着性が認められません。契約期間を1ヶ月単位としているレンタルオフィス業者さんが多いですが、長期間を一括で借りることは可能かどうか確認しておく必要があります。
バーチャルオフィスは事務所としての実体が認められないためNG
宅建業免許の申請時には、事務所内の写真を撮影して提出する必要があります。
バーチャルオフィスでは写真撮影ができず、申請書類を揃えられないという点でもNGです。
レンタルオフィスの間取りの注意点
東京都の基準を例にとると、一部ではありますが不動産業の事務所として使用する場合、以下のような基準を満たさなければならないとされています。
- 事務所と他の部屋が壁で区切られていて、事務所として独立していること
- ビルの入り口から他の部屋を通ることなく、事務所用の部屋にたどり着けること
- 部屋が事務所として機能していて、事務所以外には使用しないこと
上記のような基準は設けられているものの、基準はあれど実務上では認められることもあるというのが現状です。
こればかりはケースバイケースなので一概には言えませんが、上記の基準を満たしていない場合でも工夫次第でもしかしたら事務所として使用できるかもしれません。
レンタルオフィスの設備について
間取りの条件だけをクリアしても、不動産業としての事務所の機能を備えていなければ意味がありません。部屋にパソコンを一台だけ置いて事務所と言い張ってもダメなのです。
どのようなものが必要なのか具体例を挙げますと、
- 事務所名の表札と、事務所名が表示される集合ポスト
- 固定電話番号(※携帯電話番号不可)
- 固定電話機
- 接客用の机と椅子 お客様対応スペースを設ける必要があります。
- 事務用の机 お客様用の机とは別に必要です。
これらは最低限必要となります。
コピー機等のオフィス用品もあった方がいいですが必須ではありません。部屋の真ん中に机と椅子を並べ、部屋の隅っこに机とノートパソコンと電話機を置いた部屋でも認められたケースがあります。
逆に認められなかった例、いわゆるNG集を挙げると、
- 部屋の中にベッドが設置されていた
- ふすま一枚で部屋と部屋が区切られており、ドアを使わずに事務所に入れる
- 宅建業とは関係ないゲームや本が多数あり、外見上事務所として見えない
- 実務スペースのみ。お客様との打ち合わせスペースが確保出来ない狭さの部屋
このような事例が過去にありました。
レンタルオフィス業者さんとの話し合いを忘れずに!
借りたからといってあとは好きなように使っていいかというと、そうとも限りません。
レンタルオフィス業者さんによっては、飲食店にしか使ってはいけないとか、不動産業をやってはいけないとか、そもそも居住用にしか使ってはいけないとか、様々な制約を設けている場合があります。
このような場合は、レンタルオフィス業者さんに事務所として使うことの承諾を得ておく必要があります。
行政から承諾書を求められる可能性は高い
また、上で触れたように24時間通して自社のみが使えること、契約期間が超短期ではないこと、自社が借りたスペースに自社の顧客(不動産業を開業した後のお客さん)を招き入れて接客することが許されていること等につき、レンタルオフィス業者さんからの承諾書を添付書類として提出するように求められることも多いです。
そのため、承諾書等に柔軟に対応してくれるレンタルオフィス業者さんでなければ、宅建業免許の取得が困難になるケースもあります。
「ほかに不動産業の会社が入っているから安心」も絶対確実ではない
なお、レンタルオフィスを契約するとき業者さんから「同じ場所で、ほかにも不動産業の会社が入って営業しているから問題ないはず」と言われることもあるかと思います。
ほかに不動産業を行っている事業者さんが入居していれば、まず宅建業免許の要件上は問題がない・・・と思いがちですが、意外とそうではないケースも見受けられるので要注意です。
たとえば、以前の宅建業免許の基準ではOKとして営業を始めた業者さんが入居しているが、いまの基準では満たさないため新たに不動産業を始めることが難しい物件であるとか、あるいは不動産業といっても宅建業免許が不要なサブリースの業者さんが入居しているだけで実は賃貸や売買を取り扱う不動産屋さんは入居していない、といったケースもあります。
行政は、レンタルオフィスを利用することは例外的な扱いとして見てきますから、「問題ないと思った」という思い込みで契約してしまわず、オフィス契約前にしっかり要件を確認しておきましょう。
レンタルオフィスで確実に宅建業免許を取得したい方へ
当事務所は、宅建業免許の申請や不動産会社の設立、金融機関からの融資や保証協会入会支援など、不動産業立ち上げの際に必要な各種手続きのサポート業務を提供しています。
レンタルオフィスで確実に不動産業を始めたいという方は、一度ご相談ください。手続きに詳しい行政書士がサポートいたします。