宅建業開業に向けての前提条件である「場所、人員、お金」の準備ができたら、いよいよ都道府県庁に書類を提出して免許申請を行うことになります。
都道府県庁に提出する書類はなかなか量が多く、都道府県庁側が用意した書類に必要事項を埋めて作成するものから自分自身で用意しなければならないものもあり、完璧に揃えるには時間がかかります。
どのような書類を用意しなければならないのか、書類を提出してからどのような流れで免許が取得できるのか、しっかりと理解しておくことで準備もしやすくなることでしょう。
いよいよ宅建業免許の申請へ! どのような流れで行う?
免許申請のおおまかな流れは下記の通りです。
2.免許申請の書類を作成
申請に必要な書類は、各都道府県庁のサイトでダウンロードすることができます。
東京都の場合はこちらです。http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/491menkyo00.htm
基本的に書式は全国共通ですが、都道府県によって用意する書類が異なる場合があるので、必ずご自身が免許を申請する予定の都道府県のサイトで必要書類をご確認の上ダウンロードするようにしてください。
書類の準備にあたって
身分証明書、登記されていないことの証明書の取得について
これらの書類は、ご自身でそれぞれ取得する必要のある書類です。
細かいようですが、順番としては❶身分証明書 ❷登記されていないことの証明書 の順番で取得されることをおススメします。
また、これらは全て取得から3ヶ月以内のものでなければ使用できません。
※まず、住民票を取得されることをおすすめします。
住民票
法人で宅建業免許を取得する場合、住民票は必要書類に含まれてはいませんが、身分証明書と登記されていないことの証明書を取得する際に本籍地がわかっている必要があります。ご自身の本籍地は覚えていない方がほとんどでしょうから、覚えていない場合は本関地入りの住民票を取得するようにしましょう。
取得できる場所
ご自身の住所地を管轄する市町村役場や出張所で取得することができます。運転免許証等の身分証が必要です。
費用
1通につき300円です。※市町村によって異なる場合があります。
取得の際の注意点
- 「本籍地入り」としっかり指定しましょう!
住民票に記載される本籍地はいわゆるオプションのようなもので、請求時に特に指定しなければ本籍地が記載されません。請求用紙に本籍地を記載するかどうか選択する欄があるはずなので、本籍地を記載してもらうことを忘れないようにしましょう。ちなみに、本籍地入りにしても取得費用は変わりません。
- 郵送請求の際は日数に注意!
市町村役場や出張所の窓口で取得すればその場で受け取れますが、遠くにあって行くことが難しいという場合は郵送でも取得することが可能です。郵送での取得については、各市町村のホームページをご覧ください。
場合によりますが、遠方であったり請求が立て込んでいたりすると、投函から手元に届くまで1週間から10日ほどかかることもあります。さらには郵便局で定額小為替を購入しなければならないなど手間も増えますので、郵送請求する場合は日にちに余裕をもっておきましょう。
❶身分証明書
ややこしい名前ですが、運転免許証のようないわゆる身分証とは異なります。破産者ではないか、成年被後見人になっていないかといったことを証明する書類です。
取得できる場所
ご自身の本籍地を管轄する市町村役場または出張所で取得することができます。運転免許証等の身分証が必要です。
※ここで本籍地がわかっていないと、請求先がわからなくなります。そのため、本籍地入りの住民票の取得をおススメしています。住民票を直接窓口に取得しに行って、もし本籍地の管轄が住所地と同じであれば身分証明書も一度に取得できます。
【費用】
1通につき300円です。※市町村によって異なる場合があります。
【取得の際の注意点】
- 迷ったら「全て」を選択!
身分証明書は、主に次の3つのことを証明するものです。
禁治産または準禁治産(下記参照)の宣告の通知を受けていないこと
後見の登記の通知を受けていないこと
破産宣告または破産手続開始決定の通知を受けていないこと
市町村によっては、取得請求書にてこの中のどれを証明してほしいかを選ぶ場合があります。宅建業ではこれら全てを証明している身分証明書が必要になるので、全ての記載があるものを発行してもらうようにしましょう。
- 郵送請求の際は日数に注意!
住民票請求の時と同様に、遠方であったり請求が立て込んでいたりすると、投函から手元に届くまで1週間から10日ほどかかることもあります。郵便局で定額小為替を購入しなければならないといった手間が増えるのも同じです。
また本籍地は住所地と違って変わることが少ないため、遠方となり郵送請求をしなければならなくなることが多いです。
こちらも郵送請求する場合は日にちに余裕をもっておきましょう。
❷登記されていないことの証明書
【取得できる場所】
- 窓口で取得する場合
住所や本籍地に関係なく、全国の後見登録課がある法務局で取得できます。
- 郵送で取得する場合
住所や本籍地に関係なく、東京法務局でのみ取得できます。
【費用】
1通につき300円です。収入印紙で支払います。
【取得の際の注意点】
- 書き間違いに注意!
登記されていないことの証明書の取得方法はなかなか特殊で、証明事項を記載した申請書をそのまま複写して証明書に落とし込みます。申請書に記載する事項は氏名、生年月日、住所、本籍地です。記載が間違っていたとしても法務局は訂正してくれないので、住民票や身分証明書を先に取得して内容を確認しながら記入すると良いでしょう。
- 成年後見の扱いの有無に注意!
窓口で取得する場合は、成年後見事務を扱っている法務局でしか取得ができません。
東京の場合は「東京法務局」、埼玉の場合は「さいたま地方法務局」、神奈川の場合は「横浜地方法務局」といったように、各都道府県でも限られた法務局でしか扱いがありません。
窓口で取得するという方は、登記されていないことの証明書が取得できるかどうか事前に調べておきましょう。
- 郵送請求の際は郵送先と日数に注意!
郵送で取得請求をする場合、郵送先は「東京法務局後見登録課」ただ一つだけです。どこに住んでいようとどこが本籍地だろうと、郵送請求の窓口は東京法務局後見登録課です。
宛先住所はこちらです。
〒102-8226
東京都千代田区九段南1-1-15
九段第2合同庁舎4階
東京法務局後見登録課
また、こちらも繰り返しにはなりますが手元に届くまで1週間から10日ほどかかることもあります。郵送請求の際は余裕をもって行うようにしましょう。
履歴事項全部証明書の取得について
法人で宅建業免許を取得する場合は、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を提出する必要があります。
取得できる場所
全国の法務局で取得できます。管轄等は関係ないので、例えば東京に本店を構える会社の履歴事項全部証明書を埼玉県内の法務局で取得することも可能です。
費用
1通につき600円です。収入印紙で支払います。
取得の際の注意点
- 「履歴事項全部証明書」を取得する!
履歴事項全部証明書の他にも、「現在事項証明書」や「一部証明書」といったややこしい名前の別の書類もありますが、必ず「履歴事項全部証明書」を取得するようにしましょう。
- 「法人の印鑑証明書」も一緒に取得してしましましょう!
また、保証協会に加入する場合は法人の印鑑証明書が加入手続きに必要になります。都道府県庁への申請の必要書類には含まれていませんが、こちらも全国の法務局で取得可能なので同時に取得してしまいましょう。一通450円です。
決算書および納税証明書について
法人で宅建業免許を取得する場合は、直近事業年度分の決算書(貸借対照表と損益計算書)の写しと、法人税の納税証明書が必要になります。
- 決算書の写し
貸借対照表と損益計算書の写しが必要になります。直近の事業年度のものが必要になるので、決算期が近い場合は用意できるまで時間がかかることに気を付けておきましょう。
- 納税証明書
税務申告がなされ、その税金が納められているかどうかを証明してくれる書類です。税務申告が受け付けられていれば、未納の税金があっても宅建業免許申請には差し支えありません。
【取得できる場所】
法人の本店所在地を管轄する税務署
郵送での申請のほか、e-taxを利用したオンラインでの取得も可能です。
【費用】
(税目)×(年度数)×(通数)×400円です。収入印紙で支払います。
宅建業免許申請においては、税目は「法人税」のみの1税目、年度数は1ヶ年、通数は1枚のみで足りるので、取得費用は1×1×1×400 = 400円です。
【取得の際の注意点】
- 税目は「法人税」のみでOK!
納税証明書は、様々な税目につき証明してくれるものです。宅建業免許申請においては法人税の証明がなされていれば足ります。税目が増えると取得費用も高くなるので、過不足のないように証明してもらいましょう。
- 取得する証明書の種類は、「その1」で!
納税証明書は、証明する内容によって全部で4種類あります。宅建業免許申請において必要となるのは、「その1 納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等の証明」です。
- 決算書と同じ年度のものを取得する!
決算書と納税証明書はセットです。提出する決算書の内容をもとにした税金について証明した納税証明書を用意する必要があるので、決算書と同じ年度の納税証明書を取得するようにしましょう。
- 郵送請求の際は日数に注意!
遠方であったり請求が立て込んでいたりすると、投函から手元に届くまで1週間から10日ほどかかることもあります。郵便局で定額小為替を購入しなければならないといった手間が増えるのも同じです。郵送請求する場合は日にちに余裕をもっておきましょう。
※決算を迎えていない新設法人の場合
上記は、決算をすでに終えている法人が用意する書類です。新設法人の場合は決算を迎えていないので、決算書はもちろんのこと納税証明書もありません。
そのため、新設法人の場合は「開始貸借対照表」という書類をご自身で作成して提出することになります。
2.各都道府県の窓口に提出
提出先は、基本的に各都道府県庁の不動産業課です。
※2019年3月現在の申請先一例です。
東京都 | 東京都庁第二庁舎3階 東京都都市整備局 住宅政策推進部 不動産業課
〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 |
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埼玉県 | 埼玉県庁第二庁舎1階 埼玉県都市整備部建築安全課 宅建業免許担当
〒330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 第2庁舎1階 |
神奈川県 | かながわ県民センター4階 神奈川県県土整備局 事業管理部 建設業課
〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2 |
申請費用として、知事免許の場合は33,000円、国土交通大臣免許の場合は90,000円がかかります。
3.審査
書類に不備がなく窓口で無事受理された後は、欠格事由に該当する役員がいないかどうかなどの審査が行われます。
都道府県にもよりますが、知事免許の場合は大体1ヶ月前後の期間を要します。大臣免許の場合は2ヶ月半~3ヶ月ほどの期間を要します。
審査が完了すると、「免許が下りましたよ」という内容の免許通知ハガキが届きます。免許申請書類に記載した本店所在地に届くので、開業前で事務所を空けがちという場合はお気を付けください。
4.保証協会への加入申込みと審査
詳しくは別ページにて解説しますが、保証協会に加入する場合は協会にて別途手続きが必要になります。申込みから加入までに1ヶ月から1ヶ月半程度の期間を要しますが、加入申込みは都道府県の窓口に免許申請書類を提出した後すぐに行うことができるので、免許の審査を待つのと同時進行で加入手続きを進めていくことが可能です。
そのため、都道府県庁への申請書類の準備と同時に保証協会への加入手続き書類の準備も進めておくことをおススメします。
5.免許証の受領
審査が完了し免許通知ハガキが届いたら、最後に免許証を受け取ります。
免許証は、都道府県知事の名前が書いてある賞状のようなものです。これを受け取ると、ようやく免許の取得は完了です。
免許証の受け取りは都道府県の窓口で免許通知ハガキと交換で行うのが基本ですが、東京の場合は保証協会経由で受け取りが可能になっている場合があるなど対応は様々です。申請の段階で、免許証の受け取りについて説明を受けておくと良いでしょう。
免許通知ハガキと一緒に持参しなければならない書類は、弁済業務保証金分担金の納付書または営業保証金の供託書です。保証協会に加入する場合は弁済業務保証金分担金の納付書、加入せず営業保証金を供託する場合は営業保証金の供託書を持参しましょう。いずれの場合も、提示用の原本と提出用のコピーが必要になります。
都道府県庁への宅建業免許申請にはどのようなものを準備する必要があるのか、申請してからのおおまかな流れはどんなものか、ある程度はお分かりいただけたでしょうか。
必要な書類や手続きを事前にしっかりとわかっていれば、準備段階で余計な時間をとられずに済みます。この記事をご覧いただいたことで、申請の準備の一助となれば幸いです。
まとめ
- 宅建業免許の申請書類は、各都道府県のホームページでダウンロードできるので、基本的には必要事項を記入していく形で作成する。
- ダウンロードできる書類の他、自分で取得しなければならない書類もある。
- 宅建業免許が下りるまで、早くても1ヶ月程度の期間を要する。
- 保証協会に加入する場合は、宅建業免許の審査を待つ間に同時進行で加入手続きを進められるので、保証協会の加入手続き書類も同時に準備しておく。
- 宅建業免許が下りたら、その旨の通知ハガキが本店の住所に届く。
- ハガキが届いたら、それと交換で免許証を受け取りに行く。