宅建業免許取得にあたり、「保証協会」や「ハト、ウサギ」というワードを耳にされたことはあるでしょうか?
宅建業を営む上では、何か事故があったときにお客様へ支払う賠償金を確保しておくため、最寄りの法務局に「営業保証金」を供託するか、保証協会に加入して「弁済業務保証金分担金」の納付をしておかなければなりません。
何かあった時のために保険をかけておくイメージです。
多くの宅建業者は、保証協会に入会し弁済業務保証金分担金の納付をしています。保証協会への入会、弁済業務保証金分担金の納付・・・これら一連の手続きはどのように行えばいいのか、このページで解説していきます。
そもそも保証協会の仕組みとは?
宅建業を営む上では、お客様への賠償金の支払いを担保するために最寄りの法務局に「営業保証金」を供託(預けておくこと)するか、保証協会に加入して「弁済業務保証金分担金」を納付するかのどちらかの措置をとっておかなければなりません。
ここで、まずは供託しなければならない営業保証金の額を見てみましょう。
用意する金額 | 1,000万円 (+支店1つにつき500万円) |
---|
「高すぎる!」「そんな金額いきなり用意できない!」と思われる方がほとんどでしょう。ですがご安心ください。営業保証金を供託して営業している宅建業者はほとんどいません。
大多数の宅建業者は、営業保証金を供託する代わりに保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金の納付をしています。納付すべき弁済業務保証金分担金の額は次の通りです。
用意する金額 | 60万円 (+支店1つにつき30万円) |
---|
ご覧のように、弁済業務保証金分担金の方がはるかに安く済みます。保証協会に加入すれば営業保証金を供託する必要はなく、代わりに弁済業務保証金分担金の納付をすればよいことになります。弁済業務保証金分担金以外にも別途入会金や年会費等もかかりますが、それらを合わせても110万円前後に収まります。
このような理由から、宅建業者の大多数は営業保証金を供託するのではなく、保証協会に加入し弁済業務保証金分担金の納付をすることを選択しています。
賠償額に関する注意!
業務上で何か事故があった場合には、お客様への賠償は「供託すべき営業保証金の額」を基準に行われます。これは保証協会に加入している場合でも同じです。
「保証協会に入るときに納付したのは60万円だったから、賠償責任もその基準だろう。」と勘違いしてしまう方も多いのですが、例えば本店が一つだけの業者が1,000万円の賠償責任を負った場合には1,000万円の賠償をしなければなりません。弁済業務保証金分担金の額(60万円~)を基準とするのではないことに注意しましょう。
保証協会に加入しよう!手続きの流れは?
保証協会に加入せず営業保証金を供託する場合と、加入して弁済業務保証金分担金を納付する場合の違いについては大まかにお分かりいただけたと思います。
ここからは、保証協会への加入手続きの流れについて解説していきます。
「ハト」と「ウサギ」とは? どちらに入ればいいの?
保証協会について調べたり他の宅建業者から話を聞いたりしていると、「ハト」や「ウサギ」というワードを耳にすることがあると思います。これらは、保証協会の通称なのです。
正式名称はそれぞれ次の通りです。
ハト | 全国宅地建物取引業協会連合会 |
---|---|
ウサギ | 全日本不動産協会 |
それぞれがハトまたはウサギをシンボルマークとしているため、一般的にこのように呼ばれています。
保証協会はこれら2つがあり、どちらに加入するかは自由ですが両方同時に加入することはできません。
加入者が受けられる各種サービスや入会金等の費用、入会手続きの手間といった事項を比較しても、両者には大きな差がないというのが現状です。競合相手が1社しかいないので、「あっちが値下げしたのならウチも値下げだ!」といった同調すする動きが起こりやすいのです。
とはいえ、両者とも「ウチに入ってほしい!」と考えているのは事実ですから、入会金の値下げキャンペーン等が行われることがあります。
ご自身が宅建業を始められる時期にちょうどキャンペーンを実施している方に加入するなど、費用や窓口へのアクセス等を考慮してどちらに加入するのかを選択されると良いと思います。
調べたらなんか支部が沢山ある・・・
保証協会には都道府県多単位、市区町村単位で多くの支部があり、細かく管轄が分かれています。原則として「本店所在地の最寄りの支部」に加入することになります。ご自身の管轄がどの支部なのか、一度協会に確認しておくとよいでしょう。
紹介者が必要?
支部によりますが、加入にあたってその保証協会の支部に加入している宅建業者を紹介者としてたてることを求められる場合があります。加入を考えている支部に事前に確認しておくようにしましょう。宅建業者が知り合いにいない場合には協会員の宅建業者を紹介してくれることもあるので、紹介者が必要な場合はこちらも支部に相談してみましょう。
加入手続きの流れ
保証協会への加入手続きには、1ヶ月~1ヶ月半程度の時間を要する場合があります。そのため、都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出してすぐに加入手続きに移り、免許が下りるまで同時進行で進めていく方がほとんどです。
簡単な流れは次の通りです。
【4月1日に都道府県庁への免許申請が完了した場合】
協会の支部によっては、入会金を支払うタイミングや事務所での面談時期等が前後したり、別途説明会への参加を求められることもあります。協会から加入手続きの書類を取り寄せると、加入までのスケジュールを同封して送ってくれるので、そちらも併せてご確認ください。
1.都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出する
保証協会への加入手続きは、都道府県庁に宅建業免許を申請した後で行うことになります。まずはこちらから行いましょう。
都道府県庁への提出書類は、提出用の原本1部とこちらの控え用の副本(コピー)1部を用意しておく必要があります。書類が受理されると、副本に受領印を押してもらえます。これが申請を行った証拠になります。後ほど保証協会での加入手続きで早速使用しますので、必ずもらうようにしてください。
2.保証協会への加入書類を提出する
書類作成はお早めに!
保証協会の加入手続きは、都道府県庁に書類を提出した後すぐに行うことができます。このタイミングで行うことで、都道府県庁から免許が下りるのを待つ間に保証協会への加入手続きを進めることができるので強くおススメします!
よって、保証協会への加入手続きに必要な書類は都道府県庁に書類を提出する前に用意してしまいましょう。都道府県庁に提出する書類と同時に作成を進めておきましょう。
加入手続き書類はどこで用意する?
加入手続きに必要な書類は、保証協会に連絡して取り寄せることができます。
加入希望業者向けのダイヤルや、支部に直接連絡して「入会したいので書類を送ってください!」とお願いすれば、書類を送ってくれるだけでなく必要に応じて手続きの流れを説明してくれます。
会社名義の口座のご用意を!
後に支払うことになる入会金や弁済業務保証金分担金、継続的に支払う年会費といったお金は原則として会社名義の口座からの振込みや引落しで支払うことになります。口座振替依頼書類も加入手続き書類に含まれているので、まだ会社名義の口座を開設していない場合はこの段階で用意しておきましょう。代表者の個人の名義の口座等は使えません。必ず会社名義の口座をご用意ください。
3.保証証協会に入会金や年会費、弁済業務保証金分担金を納付する
書類を提出し、不備がなければ本部で入会審査が行われ、それを通過すれば入会金等の支払いになります。支払額は保証協会から連絡があるのでそちらをご参照ください。
トータルの金額は弁済業務保証金分担金を含めて110万円ほどですが、キャンペーンや加入時期によって多少の差があります。
支部によっては会社名義の口座からの入金しか受け付けてもらえない場合があるのでお気を付けください。
4.事務所にて面談
支部によって時期は異なりますが、保証協会の方を会社に招いての面談があります。会社の代表者と、専任の宅地建物取引士が参加します。
これからどのように事業を行うつもりなのか、事務所はちゃんと整備されているのか、といった事項の軽い確認なので、そんなに身構える必要はないです。
他にも、支部での研修や説明会に参加する必要がある場合がありますので、支部に確認をしておきましょう。
5.都道府県庁から免許が下りた旨の通知ハガキが届く
都道府県庁に申請書類を提出してから約1ヶ月後(大臣免許の場合は約2ヶ月後)、事務所宛てに免許が下りた旨の通知ハガキが届きます。
加入手続きの時にも説明があると思いますが、このハガキを保証協会にFAXで送ることで最終的なOKが出て、手続きはほぼ完了となります。
保証協会にとって業者は「お客様」です。ぜひ入ってほしいと思っているので、基本的に親切に教えてくれます。わからないことがあれば協会に気軽に問い合わせてみましょう。
加入するのは「保証協会」だけではない?
ここまで読んでくださった方は、「あーそうなのね、『保証協会』ってやつに加入すればいいのね。」と認識されたと思いますが、正確に言うとそうではありません。
宅建業者や行政書士等の専門家は一般的に「保証協会」と呼んでいますが、保証協会以外にも加入する団体があります。
とはいっても、手続き自体は一回でまとめて進むのでご安心ください。
加入する団体
①宅建業協会または不動産協会(ハトまたはウサギの本部のようなもの)
②保証協会
③協同組合(指定流通機構・レインズ)
④政治連盟
加入する団体は複数ありますが、強制ではないものもあります。加入に必要な書類は協会が一括で用意してくれますし、提出も協会の窓口で一括で受け付けてもらえますのでご安心ください。
とはいっても、加入する団体が複数ある以上は用意する書類もそれだけ多くなるので、しつこいようですが書類の準備には余裕をもって動けるようにしておきましょう。
まとめ
- 宅建業者は、何かトラブルがあった場合に備えて一定の金額を預けておかなければならない。
- 法務局に営業保証金を供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付する方法がある。
- 営業保証金は最低1,000万円だが、弁済業務保証金分担金は最低60万円で済むので、大多数の業者が保証協会への加入を選択している。※別途入会金等がかかる。
- 保証協会には「ハト」と「ウサギ」の2つがあり、どちらに加入するかは自由だが2つ同時には加入できない。
- 加入に必要な書類は、都道府県庁に提出する書類と一緒に準備しておき、都道府県庁への書類提出が終わり次第すぐに提出に行くとよい。
- 書類提出後には協会本部での入会審査、入会金や弁済業務保証金分担金の納付、事務所での面談といった手続きがある。
- 入会金の支払い等の金銭のやり取りは、会社名義の口座から行うのが原則なので事前に開設しておく。
- 事務所面談は、会社の代表者と専任の宅地建物取引士が出席する。
- 都道府県庁からの免許通知ハガキが届いたら、FAXでハガキのコピーを協会に送り、最終的な入会OKが出る。
- 「保証協会」と総称されることが多いが、実際には「宅建業協会または不動産協会」、「保証協会」、「協同組合」、「政治連盟」の4団体がある。
- 4団体の加入手続きは一括で行うことができ、加入書類も全て協会が一度に用意してくれる。